第2章 しあわせなゆめのはなし
「ここだよ!駅」
「おう、ありがとな。助かった」
「ふふ、どういたしまして!」
20分ほどだったろうか。そいつと話しながら歩いていると時間はあっという間に過ぎていた。そして、俺はやっと目指していた駅にたどり着くことができた。
「ねえねえ、お兄ちゃん」
「ん?なんだ?」
「えっと・・・約束して?いつかわたしにお兄ちゃんのバッタ、見せてくれるって」
まだ言ってんのか、とかなんで今日会ったばかりの俺の泳ぎがそんなに見たいんだよ、とか思う。だけど、なぜかそいつにじっと見つめられると、言うことを聞いてやりたいような、そいつの顔を曇らせたくないような、そんな気持ちになった。
「おう、約束する。いつか見せてやる」
「じゃあ・・・はい!」
確信なんてないけれどそう言ってやると、そいつは右手の小指を立てて、俺の前に差し出してきた。
「はぁ?」
「ゆびきり!ね?」
「あー・・・おう・・・」
この歳で指切りかよ、と思ったが、そいつの勢いに押されて俺も右の小指を差し出した。
「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本の〜ます!ゆびきった!!」
俺がぼんやりしてる間に、そいつは俺の小指と自分の小指を絡めて、ぶんぶんと上下に振り出した。激しい指切りだな、とかこいつ指ほっせ、とか思ってる間に指切りは終わっていた。
「ふふ、約束したからね!」
「・・・おう」
なんだかこのちっこいのにずいぶん振り回されたな、と思ったけど、そいつの笑顔を見ると不思議と嫌な気はしなかった。