第6章 ある夏の一日
「・・・ふふふ」
「笑うな、ったく・・・・・・はっ!」
私が笑えば宗介もすぐに笑ってくれる。宗介の笑顔、大好き。
「ヒカリ・・・」
「宗介・・・」
お互いに名前を呼び合って。宗介の顔が近付いてくる。唇が触れ合うまであと5センチ・・・
「・・・あっ!!」
「どうした?」
・・・いけない。大切なことを忘れてた。
「宗介さん、お仕事お疲れ様です!」
・・・ああ、やっと言えた。ずっと言いたかったことが言えてすっきりしていると・・・
「ふはっ!・・・はははははっ!!お前・・・なんだよ、それ・・・はははっ!」
・・・宗介さんは大きな声を上げて笑い出した。
「へ?な、なんで笑うんですか?」
「いや、普通このタイミングで言わねえだろ・・・っはは・・・ほんっとお前おもしれ・・ははは!」
いつもそう。私にとっては全然面白くないのに、宗介さんは私のことを面白いって笑う。
「お、面白いって言わないで!」
「いや、だって面白えし」
「面白くない!」
「面白え」
「面白くない!!」
「面白え」
「面白くない、宗介さんのばか!」
ベッドの上で折り重なってこれからって時なのに、言い合いになっちゃって。本当に私って子供だ。色気なんて全然ない。
『宗介』って呼んでたのもいつの間にか『宗介さん』に戻っちゃったし。
「む〜・・・」
「・・・・・・ふはっ!」
「・・・ぷっ!あはは!」
・・・でもこれでいい。言い合いして、でも最後には笑い合って。これが私と宗介さん。
「はは・・・ほんっとお前、相変わらず色気ねえよな」
「ひ、ひどい!わざわざそんなこと言わなくっても・・・」
せっかくいい雰囲気になってたのに。またしても宗介さんは失礼なことを言う。そんなこと自分が一番よくわかってるもん。
「・・・でも・・・そんなとこが好きだ」
「・・・うん、私も・・・好き」
・・・ああ、やっぱり宗介さんはずるい。絶対こんなの許しちゃうに決まってる。大好きな気持ちが溢れて止まらなくなる。
早くこの気持ち、伝えたい。言葉だけじゃ伝えきれない気持ち、全部。
「ヒカリ・・・」
「宗介さん・・・」
もう一度名前を呼び合って、小さく笑い合うと、宗介さんの唇が私の唇を塞いだ。