第4章 きみに会えてよかった おまけ
「そういえば最近、水泳部のみんなにお菓子作っていってなかったっけ。帰ったら何か作って、明日持って行こうかなあ」
公園からヒカリの家へ向かう途中、思い出したようにヒカリが言った。
「・・・結構、作っていったりしてんのか?」
なるべく感情を表に出さないように、努めて冷静に聞く。だけど、繋いでいる手にほんの少しだけ力が入ってしまった。
「はい!渚先輩なんてたくさん食べてくれるから作りがいあるし、真琴先輩も甘いもの好きだから喜んでくれるし」
「へぇ・・・」
「あ!真琴先輩、明日部活来てくれるかなあ。遙先輩にも渡したいし、教室まで持って行こうかなあ、ふふふ」
無邪気に笑っているこいつは、多分俺の気持ちなんてこれっぽっちもわかっちゃいないんだろう。
・・・いや、俺も別にそこまで気にしてるわけじゃない。ヒカリの手作りを先に食ったのがハルや真琴達だったことなんて些細なことだ。別にムカついてない。
それに、ヒカリんちに行った時なんかは、手作りの菓子を振る舞ってくれたりするし、外で会う時なんかも綺麗にラッピングされたクッキーなんかを持ってきてくれたりする。
だから別に気にすることじゃない。
「別に・・・そこまでしてやんなくてもいいんじゃねえの」
ヒカリにとって、水泳部の奴らが大事な仲間だってことはわかる。
だけど、わざわざ教室まで持って行ってやるなんて、そこまでするのはなんかやりすぎなんじゃねえか、そう思ったから言ってやった。
「・・・・・・」
「な・・・んだよ」
すると、ヒカリはじーっと俺を見上げてきた。その瞳があまりに真っ直ぐすぎて、思わずヒカリから視線をそらしてしまう。
「宗介さんは?」
「は?」
「宗介さんは、何か作って欲しいお菓子ありますか?」
「あー・・・いや・・・シナモンさえ入ってなきゃ何でもいい」
ヒカリの唐突な質問に、つい素っ気ない返事をしてしまう。
「はい!ふふ、何にしようかなあ」
だけど、ヒカリは俺の返事などまったく気にしてないようで、楽しそうに笑っている。
「・・・ふふふ」
そして、今度は俺を見上げて、なぜか少しいたずらっぽく笑う。