第88章 神聖たる導き
鬼岩城「…はい
ご武運をお祈りしております」
深々と頭を下げる鬼岩城に…
僕等はなすことも何も無く、破壊する意味も無い為、その場を後にした
そんな時間があるならば、今あるものを…守れるものを守ろうと……
そのやり取りは…『五戒訓示(ごかいくんし)』として、残され続けることとなった
『それ』は下記のように記されている――
戒めるべきは己が個
汝、己も他も大事にせよ
汝、汝を大事にせぬものを、己が身よりも大事にするべからず
汝、己が心と他が心、個々の心を重んじよ(尊重せよ)
汝、互いに気に掛け重んじ合える他を、家族と思うべし
汝、己も他も見ずに、思い通りに支配しようと押し付けるべからず
これらを自戒し励むべし
さすれば道は開かれん
そう…後世に渡るまで遺された
残され続けていった……
人が人を想い重んじる…心を見る、人を見る心を、培い、紡ぎ、繋ぐ社会を、『融和』を根差す為に―――
人を見ず押し付ける時、「歪み」は発する
それを正当化し繰り返す時、腐敗となりて「癌」と化す――
その対象が己であれ、他であれ…
「個を思い遣らず、大事にせぬ心」は、「人を見ぬ心」は、己が身も「消滅(癌)」へ誘わん
「人を見ず重んじぬ心」、「自らの手前勝手を押し付け歪める愚行」を、善と歪めるな
無理強いし歪めた時…「最も犯してはならない大罪(癌)」となる
心すべし
とも残されている…
五戒訓示の内、2つ目は特に大事とされている
人の優しさに付け入って利用するだけの、人を見ない愚か者に…これ以上利用されるな
殺されるな、時間や労力を搾取されるな、「一方的な関係」となるな、という意味だ
特に……ケイトは…
ケイトは、己を除く全ての実在化をしている…
その為に、己が自我を、記憶を…二度と戻らない、手にすることも出来ない状態にさせている…
ケイトにとっては消滅に近い…削って、消滅させてまで、実在化を全てにして回っているが…
本当に消滅させないべき相手か…時には見定めることも必要だと、僕は思う
だが…ケイトの思想上、それは不可能(絶望的)に近い
ケイト『どんな存在でも消えて欲しくはない――』←5161,5166ページ参照
僕は…癌が…
ケイトを殺してまで…死(消滅)に追い遣ってまで…存在すべきとはどうしても思えない!!