第88章 神聖たる導き
削られた自我は――二度と戻ることは無い
パキン
パリッパリ
二度と元には戻らない
時間がある限り
記憶が新たに増え続ける
記憶が増える限り自我は構成され続ける
なぎさ/ほのか『………
ケイト?/ケイトちゃん?』
自我が無くなり
二度と戻らなくなった自我だらけで接するとして――
それは果たして―――私と言えるのだろうか
私が私でいる根幹は変わらないとして
対価として、犠牲にならないとして…
一番大事なものは……最も大事な人の幸せは、守れるのだろうか
『…?(首傾)
(なんでそんな悲痛な表情?』きょとん
己を除く全てに…実在化して欲しいと
居て欲しいと
消えないで欲しい、死なないで欲しいと
願ったのは
他でもない私だ
払うべきなのはわかる
それが損なわれれば、己を除いた全てが消えることもわかる←掌を広げ見つめ
私が私で無くならない為に、心(根幹、主軸)までは削られないことも…わかる
でも………
私は………
私のままで、皆を大事にしたい
このままの皆で、共に時を過ごしたい
その願いすら叶わないのであれば……
なんの……為に………
(ぎゅっ)←掌を握り、歯噛みし目を閉じ
それでも………(すっ)←瞑っていた目を開く
時も…実在化させているのは……私だから
全て…私の願いから始まったことだから……
そのツケを払うのは、当然か
時がある限り構成される
自我も、記憶も…形は違うことになれど、中身は同じだ
落ち着け…しっかりしろ…
動揺するな……
大丈夫だ
大丈夫なんだ!←拳を握り震え出す
そうでなければ………
見失えば…………
それこそ……何もわからなくなってしまう…
そうならせない為にも…
皆に、いかせない為にも……
私の願いで支払う対価を、一つとして出させない為にも………
ケイト「^^
大丈夫だ」微笑
たとえ死のうが、消えようが…必ず守る――
この想いは――潰えさせはしない…
皆も……
絶対に!!
この本懐(想い、願い)だけは――譲って堪るか!!!
たとえ…消えたとしても……
そう考える部分が、強く思う自我が、
対価として消されて、二度と手に出来なくなったとしても
実在化の贄として――全てが消えて無くなろうとも
なんでそう思ったのか……わからなくなったとしても………絶対に…………やるから