第5章 遭遇と探索
涙がぼろぼろと零れ落ちていく。心が蘇っていくのを感じた。
潰されて麻痺していた感覚が、他の人(子熊)にも向けられるようになってきた。
涙ながらの嘆願を、どう受け取っているかわからない。
それでもただ、伝えたかった。
アイズがモンスターは倒すものという認識が譲れないのと同じように
こちらもまた、同じく経験しているからこそ譲れないものがあるのだと…
フィン「…迷宮は成熟した個体を生み出す。
これは子供じゃなく、生まれたばかりのモンスターというだけだ」
アイズ「!フィン」
そう言いながらフィンはしゃがみ、跪いてしっかりと子熊を抱き締めたままの私と目線を合わせながら問うた。
フィン「これから先、成長もしない。大きくもならない。進化しない限りはね。
今後もずっと同じ大きさだ。
それでも…君の気持ちは変わらないかい?」
ケイト「…うん;(こっくり)
甘いかもしれない。
それでも…どうしても殺すのなら、私を殺してからにして!」
フィン「…そうか。
この子を生かす道が一つだけある。テイマーのモンスターとしてギルドに登録することだ。
いいかい?
育てる。つまり『調教師(テイマー)』になるということは、その飼った生き物が何かして起こったことにも責任を取らなければいけないことだ。
君にそれを背負えるのかい?一生付きまとい続けるであろうそれを」
ケイト「背負う!!(きっぱり)
食事代ぐらい私が稼ぐ!人に攻撃しないよう仕込む!!絶対仕込む!」むぎゅうっ!!
「きゅ?;」←一体何?という意
フィン「…ふう…
(これはダメだと言っても聞きそうにないな)
わかった。僕が許可しよう」
アイズ「!待って!」
リヴェリア「アイズ、考えろ。
このまま退かないままでは、ケイトは文字通り死ぬまで護り抜こうとするだろう。
経験があるからこそ、譲れないと抱くものがある。アイズもまたそうであるようにな。
だからケイトに責任を課すことにした。
もし道を違えて人を襲うようなことがあれば、自分の剣で殺せと」
アイズ「!…それは」
フィン「うん。最悪、ケイトの手で殺させることになる。
でもそれはきっとないに近いだろう」
アイズ「?何で…?」
リヴェリア「ケイトの魔法を忘れたか?
クリエイトで襲わないよう魔法をかければいいだけの話だ」
アイズ「!…あ」