第4章 鍛練と迷宮
ぽとっ
雫が頬を伝って、手に落ちてきた。
ただの水かと思えば違って、涙だった。
何故かわからない。それでも何故か嬉しい。でも…何でか…哀しい。
何が哀しかったんだろう?
――もっと早くに、逢いたかった。
そう心の奥から、その渇望が溢れ出た。
ケイト「ぎり)…っ…もっと…早くに、逢いたかった;」
涙が零れ落ちる中、それを言葉にすると優しく頭を撫でられた。
フィン「習慣が習慣だけに、傷付けられない環境に戸惑いもあるだろう。
そう思うのも無理はない」
傷付けられてきた。
自由に、ありのままに居られる周囲に。
自分には受け入れてもらえる人もいない。傍に誰もいない。
誰かに、受け入れられるなんて思いもしない。
だから余計に…できなかった。
フィン「でも、今はもう違うんだ。
その時の状況じゃない。今ここにある環境は、そうじゃない。
だから…今こんな時に言う台詞じゃないかもしれないけど言うよ?
泣いていい。自分のしたいことをしていいんだ。
間違ったらさっきみたいに止めるから、安心して」
ケイト「ぎゅっ)うん…ありがとう…ありがとうっ;;」
アイズ「…っ」
リヴェリア「適材適所という奴だ」ぐっ←駆け寄ろうとするアイズを手で制す
アイズ「…リヴェリア…私にできることはあるかな?」
リヴェリア「もうとっくにやっているだろう?
ありのままのケイトを受け入れることだ。
そして在り方・生き方を諭すのはフィンや私達、年配の役目だ」
アイズ「…うん」
リヴェリア「大丈夫だ。
家族のように想っていることは十分伝わっているだろうからな」微笑
アイズ「…わかった」こく
そうして初迷宮の前に少しだけ時間を挟んだ後…
『人の為に、自分の意思まで殺すことはない』と教えられた。
時と場合によっては必要となるだろうが、日常では必要のないこと…常に気を付ける必要はないことだと。
気を付け過ぎれば、何も出来なくなるだろうから…とも――