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【YOI】君と、お前と、バンケで。【男主&ユーリ】

第2章 先輩の俺


オタベックが去った後も、礼之は暫くそのままでいた。
背中や掌に伝わるユーリの温もりを心地良く感じながら、礼之は大好きな人の愛称を口にする。
「ユリ、」
フィンランド調に自分の名を呼ぶ礼之の声は、ユーリの心と身体を優しく包み込んでいく。
「──反省したか」
「うん、本当にゴメン。僕、嫉妬してたんだ。2人はずっと前から友達で、オタベックさんは僕の知らないユリを知ってる。そんな彼からあんな風に言われて…ワザとじゃないの判ってたのにカチンと来ちゃって」
素直に反省の弁を述べる礼之に、ユーリは毒気を抜かれたような表情になる。
「所詮僕は未熟なシニアの新参者で、ユリ達とはどうしようもない隔たりがあるのは当たり前なのに、それがとてももどかしくて腹立たしくなっちゃったんだ。馬鹿みたいだよね」
「お前のそういう真っ直ぐな所、俺は、あー…その…す、好……」
「?」
「…嫌いじゃないぜ」
語尾を濁した自分に小首を傾げる礼之に、ユーリは咄嗟に別の言葉に置き換えた。
「それにな。俺は寧ろこうしてお前と知り合ったのが、今で良かったと思ってるんだ」
「何故?」
「もしもお前が俺と同じ時期にシニアにいたら、きっと俺の事、競技以外には関わろうとすらしなかったからさ」
礼之から離れたユーリは、少しだけ勢いをつけながらソファに坐り直した。
「始めは『俺個人には興味はなかった』つってたよな?ちょっと前までの俺は、マジでどうしようもねぇクソガキだったんだ」
何処ぞのコーチや元リビング・レジェンド達が聞こうものなら「過去形じゃない」と突っ込まれそうだったが、彼らが近くにいないのでユーリは構わず話を続ける。
「だけどある日、とうとうこれまでやらかした事へのツケを払う時が来た。そんな俺に力を貸してくれたのが、サユリだったんだ」
「ひょっとして、あの時のアイスショー?」
「そう。お前は先に約束してたのにズリィ、つってたけど、サユリとのあのプロは、ある意味俺にとってのターニングポイントだった。こうして今お前に先輩風吹かせられんのも、サユリ達のお蔭なんだ」
厳しくも優しい純との事を思い出しながら、ユーリはそっと口元を綻ばせた。
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