• テキストサイズ

【YOI】君と、お前と、バンケで。【男主&ユーリ】

第2章 先輩の俺


今回も、純の事前のフォローがあったからこそ、競技中は余計な事を考えずにいられたのだ。
だがそんなユーリも、礼之のFSの演技に込められた熱い想いだけは、無視出来なかった。
礼之のFSの後半部分で流れた有名なメロディと共に自分に向けられた想いは──
「…ユリ?」
呼びかけられたユーリは、慌てて頭の中の思考を中断させる。
「と、とにかく!お前は今回やる事はキッチリやり遂げたんだ。実際FSでスタオベ来ただろ?俺もオタベックも、ついでにカツ丼もお前の演技で俄然やる気出たし」
「そうなの?」
「そのせいで、腰痛忘れるレベルで燃え上がっちまったオタベックに表彰台奪われたのは、ちょっとだけムカついたけどな」
拗ねた表情をするユーリを見て、礼之は無防備に笑った。
その顔が年相応で可愛らしいとコッソリ考えながら、ユーリは人差し指を立てつつ言葉を続ける。
「大体お前は真面目過ぎんだ。シニア1年目であれだけの事しときながら未熟だの何だのほざかれたら、俺ら先輩の立場がねぇっつーの」
「…」
「だから、卑屈になる事ねえ。焦らず着実に行け。俺ならまだまだこれからもお前と競い合えるんだしな」
「…うん、有難う。オタベックさんもユリと同じ事言ってた」
礼之の口から出た友人の名に、ユーリは先程の光景を思い出すと眉を顰めた。
「お前、オタベックに何もされてねえよな?」
「え?何が?」
「アイツはムッツリだけど、同時にムッツリスケベでもあるんだ。前に『もしもサユリが女だったら、モロ好みのタイプだ』とか、ふざけた事抜かしてたし!」
「あ、確かに純さんみたいな優しくて面倒見の良い女性がいたら、モテモテでしょうね」
「それはともかく、ホントに何もねぇんだな?」
「オタベックさんには、目についたゴミを取って貰ってただけだよ」
「はぁ?…チッ、あの野郎」
まんまと友人の計略に嵌められた事を知ると、ユーリは苛立たしげに舌打ちをする。
「どうしたの?」
「何でもねぇ。…ちょっとこっち来い」
「あ、待ってよ」
ソファから立ち上がって人気のない場所まで移動するユーリを、礼之は慌てて追いかける。
礼之がついて来ているのを確認したユーリは、一度だけ深呼吸をすると、僅かに緊張した面持ちで向き直った。
/ 15ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp