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【YOI】君と、お前と、バンケで。【男主&ユーリ】

第1章 新参者の僕


まるで後ろから羽交い絞めにされるような格好になった礼之は、次いでそれを自分に行った人物の正体を知ると、驚愕に目を見開いた。
そこには、顔を怒りとその他の理由で赤く染めたユーリが、片手で礼之の身体を引き寄せつつ、反対の手でオタベックを押し退けていたのである。
「随分と派手なおでましだな。アレクが驚いているぞ」
「馴れ馴れしく呼んでんじゃねぇぞ!てめぇ、今コイツに何しようとした!?」
「何も。お前と違って親交を温めていただけだが?」
判り易い反応に内心笑いを堪えながら、オタベックは努めて平静にユーリを見据える。
「うるせぇ!様子を見て欲しいとは頼んだが、誰がここまでやれっつったよ!いいか、コイツはな!コイツは俺の、俺の…」
唇を震わせながら先ほどよりも頬を紅潮させているユーリに、思わず礼之も鼓動を躍らせる。
しかし、
「コイツは俺の…か、可愛い弟分だ!よからぬ真似しようもんなら、ただじゃおかねぇからな!」
照れ隠しありありとはいえ、続けられたユーリの言葉に礼之は露骨に表情を歪め、オタベックは顔を背けると、ため息を零した。
「…お気遣い恐れ入ります。ですが、僕よりもご友人と一緒の方がよろしいのではありませんか?『お兄様』。では、新参者の僕はこれで」
棘を含んだ礼之の発言と冷めたような目付きに気付いたユーリは、弾かれたように顔を上げた。
ユーリの手を解いてソファから立ち上がろうとする礼之のスーツの裾を、力任せに握り締める。
「何ですか、そんな風に掴まれたら皺になっちゃいますよ」
礼之の問いには答えず、ユーリは『弟分』の背に頭を押し付けた。
そこから仄かな温もりと、ユーリの手が微かに震えているのを感じた礼之は、やがて裾を掴む彼の手に自分のそれを重ねると、軽く指でユーリの手の甲をなぞった後で、互いの指を絡ませるように握り合った。
「…ごめんね、『ユリ』。君に声をかけられなかった意気地なしな僕の代わりに来てくれて、本当に有難う」
「…判ってんなら、もっと俺の寛大な心に感謝しろよ!」
そう悪態つくも、ユーリは礼之から離れない。
そんな2人の様子を見たオタベックは、礼之にそっと目配せをするとソファから立ち上がり、いずこへと去っていった。
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