第3章 写しへの接し方
鯰尾に見られながら顕現させるのは少し緊張するが、深呼吸をして刀に手を添えた。
いつも通り暖かくなり、部屋に光が満ちて桜が舞った。
果たしてどんな刀剣男士が来るのだろうか。
桜が舞い終わった後も、その姿を把握するのに時間がかかった。
布を被っているせいで顔が良く見えない。
「山姥切国広だ。……何だその目は。写しだというのが気になると?」
『え、あ、いやガン見してごめんね。布で良く見えなかったから』
「写しの俺をそんなに見てどうするつもりだ」
『……すみませんでした』
とてもネガティブな方がいらっしゃいました。
どう言葉を掛けて良いのか…いや、下手に言葉を掛けるべきではないのかもしれない。
しばらく様子を伺うことにしよう。
『本丸へようこそ…えーと……』
「山姥切国広だ。写しの名など覚えるに値しないか…」
『違う違う!私の記憶力の問題だから!えーと、そこの君!名前なんだっけ!』
なんとか山姥切の機嫌を直そうと、鯰尾の名前を忘れたふりをした。
「え?鯰尾藤四郎ですけど」
『そうだったそうだった!いや~うっかり忘れちゃうんだよね!アハハハ…』
ちらっと山姥切に視線を向けるとジッとこちらを見ていたが、名前を忘れられた事をもう気にしていない様子だった。
「主ぃー俺お腹が空きましたよー」
そうだった。
今はもうお昼。
2人を連れて広間へと向かう。
『ちょっと待ってて』
2人を広間に待たせて、厨へ何か食べ物はないか探しに向かった。
『お、ラッキー!陸奥が作っておいてくれたのかな』
そこには陸奥が作っておいてくれたであろうご飯があった。
食器類を準備していると、山姥切が声を掛けてきた。
「何か手伝うことはあるか?」
『お、助かる~。どの食器に何を盛れば良いのか分からなくて…』
白米とお味噌汁なら分かるが、朝餉になかった料理の対処が分からなかった。
「この煮物はこの皿に盛ればいいだろう。これは小皿に――」
山姥切は手際良く三人分の昼餉を用意していく。
頼れる好青年ではないか、山姥切国広。惚れた。
『あ、虎君達のご飯も用意しなきゃ』
五虎退が出陣している間、虎達はお留守番なのだ。
5匹分のお皿を取り出して陸奥が虎用に作ったご飯を冷蔵庫から取り出した。
用意を終えると山姥切は器用に3人分の昼餉が乗った盆を持って広間へと戻った。
