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本丸生活、波乱万丈なり

第3章 写しへの接し方


『君だったのか!』

バッと扉を開け放ち叫んだ。
その小人はビクッと肩を震わせると、フッと空中で消えてしまった。
小さな帽子に青い着物がなんとも可愛らしかった。
鍛刀を行う限り、また会う機会はあるだろう。
その時に話でもしよう。

『よし』

さっそく顕現させるために、刀に手を添えた。
自身の力を流し込むイメージを浮かべる。
少しコツを掴めた気がする。
刀が暖かくなり、光の中で桜が舞った。

「俺の名前は鯰尾藤四郎。燃えて記憶が一部ないけど、過去なんか振り返ってやりませんよ!」

『これまたとんでもない美少年が来たもんだ……』

綺麗な長髪にぱっちりと開いた瞳はぱっと見女の子にも見える。
そんなこと言わないけど。

『初めまして、藤四郎君。ようこそ本丸へ』

「あなたが新しい主ですね。俺のことは鯰尾でいいですよ、藤四郎はたくさんいるので」

『そうなんだ。じゃあ鯰尾で。本丸を案内するね』

まずは私の部屋から案内しようと思い、二人で審神者部屋へと向かう。
審神者部屋へと続く縁側を歩き、角を曲がって入り口の障子戸が面する縁側に辿り着くと鯰尾が歓声を上げた。

「わあー池だ!魚とかっていますか?」

『どうだろう、ちゃんと見たことないから…』

審神者部屋の前には池があり、その池は縁側の下にまで延びていた。
今思えばなかなかかっこいい造りをしている。
鯰尾は縁側に寝そべって池を覗き込んでいたが、がっかりした様子で起き上がった。

「何もいないみたいですね」

『そっか…』

「錦鯉でもいたらきっと綺麗ですよ」

それがどんな魚なのか分からないが、喜んでくれるなら町へ行ったときに探すのもありだ。

『今日町へ行くから探してみよっか』

そういうと鯰尾は顔を輝かせた。

「本当ですか!やった!」

そんなことで喜んでくれるとは。
嬉しさで顔が綻んだ。
その後1階のお風呂場、厠、厨、広間と刀剣男士達が使うことになる2階の部屋、ついでに屋根裏部屋を順番に回って案内をした。
終わる頃にはちょうどお昼時だった。

『もうお昼の時間か…』

「昼餉があるんですか?お腹ぺこぺこですよ~」

『あると思う。でもその前にもう一人の刀剣男士を顕現させないと』

もう残り時間も0になっているはずなので、鯰尾と2人で鍛刀部屋へと向かった。
そこには既に刀掛けに刀が一振り掛けられていた。



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