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本丸生活、波乱万丈なり

第3章 写しへの接し方


『これが筆なのは分かる。でもこの炭みたいなものはなんだろう?』

せっかく買い物リストを作ろうと思ったのに、これでは書けそうにない。
買い物リストは諦め、鍛刀が終わるまでか、陸奥達が帰ってくるまでふて寝することにした。

『筆って絵描くものだろーが…どうやって字書くんだよこんのすけのバカアホタコ』

昔は書道とかいう筆と黒い絵の具で文字を書く文化があったけど、今はもうペンか電子機器に対して使うタッチペンでしか文字は書かない
使い方ぐらい教えてくれよな。

大の字で寝っ転がり、そっと目を閉じた。
障子戸を開けておいたので、気持ちの良いそよ風が優しく頬を撫でていく。
うとうとしていると、突然腹から何かが込上げてくるのを感じた。

『――っ!?』

朝餉を食べたときから少しの気持ち悪さは感じていたが、我慢できないものではなかったのでそのまま耐えていた。
しかし、横になったことで、食べ物を受け止めきれていない私の胃から押し戻ってきたのだろう。
押えきれないと思い、急いでトイレ…じゃなくて厠へと向かった。
幸い、厠は風呂場の隣だったため迷わずに済んだ。

『う゛っ…うえ゛@#%ΩΧΨ*゛』

せっかく陸奥が作ってくれた朝食を…
リバースしてしまったショックと申し訳なさに、その場でしばらく放心状態でいた。

『トイレ…厠は現世と同じにしてくれて良かったな』

昔風にするために現世のとは少し形が変えられているが、使い勝手は同じなので助かった。
名称には気をつけないといけないが。
現世の言葉は刀剣男士を混乱させたりするからなるべく控えるようにって言われたが、じゃあ私はいいのかよ!混乱しても!と心の中で叫んだものだ。
しかし、陸奥や五虎退、今剣を見ていたら、こんな苦労どうってことないと思えた。

『…さてと』

吐き気も治まり、そろそろ40分過ぎた頃だろうか。
一度鍛刀部屋へ行ってみることにした。

鍛刀部屋の前に着くと、ゴソゴソと物音が聞こえた。

『え?うそ…空き巣?』

今この本丸には私しかいないはず――
空き巣だったら、私だけでは対処できない…っていうか怖くて無理。
ガクガクと震える足を引きずって鍛刀部屋の引戸をそっと少しだけ開いて中を覗いた。

『Oh…』

そこには可愛い小さな人間、いや小人?が出来上がった刀剣をいそいそと刀掛けに掛けていた。


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