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本丸生活、波乱万丈なり

第2章 新しい仕事



昨日はなかったはずの箪笥を見つけ、私は迷わず弄った。

中に女物の下着や日本の民族衣装である着物を見つけた。

『……可愛い』

自分の身体に当ててみると、裾は膝下までしかなく、私の知っている一般的な着物よりも少しだけ短かった。
きっと歩き易くするためなのだろう。
柄も派手すぎず地味すぎず自分好みである。
しかし、着るにはこれだけで良いのだろうか。

一応、着物だから帯とかって必要なのだろうか。
迷っていると今剣と五虎退が私の手元を覗き込んだ。

「わあ!きれいなきものですね!」

「きっと主さまが着たら綺麗だろうなあ!」

やだわこの子達。
現世でそんな嬉しいこと言ってくれる子どもはいないぞ。正確には刀だけど。
嬉しいじゃないか。

『あ、2人とも、この服って着るのに他になにか必要なのかな?』

「おびはひつようですよ」

「帯留めの紐も必要だと思います」

そうして2人に必要なものを出してもらい、お風呂場へと案内してもらった。

『えーっとこれって何ていう名前だっけ?』

私は入口に垂れ下がっている2枚の布を指して聞いた。

「それは暖簾と言います」

『ほう』

暖簾を潜ってみる。
楽しい。
潜ったときの、顔にふわっと当たる感触が気に入った。

「「……」」

『……あ』

出たり入ったりしている私に、2人は苦笑いを浮かべていた。

『ごめんごめん!案内ありがとう』

「「はい」」

2人の後ろ姿を見送り、中に入った。
脱衣所で服を脱いで、引き戸を引いた。
障子戸の開け方を教わったお陰で難なく開けることができた。

『これは確かに広いな』

温泉旅館みたいな雰囲気があった。
奥には広々とした湯船が見える。
あんな大きな風呂に入れるなんて…と興奮せずにはいられなかった。
急いでシャワーの前に置いてある簡易的な木製の腰掛けに座り、目の前のレバーを右に動かしてみた。
その瞬間、壁に掛けられているシャワーからドッと流れてきた。冷水が。

『ぎゃああ!?!』

あまりの冷たさに、勢い良く後ろへ飛び退いた。
尻を強打したが、痛さよりも冷たさの方が身体の感覚を支配していた。

『つめた!あーびっくりした』

レバーを確認すると、私が動かした方向には「温」と表示されている。
どうやら直ぐにお湯が出るわけではないようだ。
しばらくすると、シャワーから湯けむりが立ちこめてきた。
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