第9章 【石田三成】待てば甘露の日和あり
がちぃん――と。
刃と刃が音を立て合わさり、そして離れるのを幾度となく見せられる度。
心臓が跳ね上がり、ほんの小さく悲鳴が弾ける。
その度に隣に座る家康、そして反対隣の秀吉さんが、まるで宥めるような視線を向けてくれる、けれど。
真剣な眼差しをぶつけ合う、二人の試合はまだ終わりそうに無い…怖くなって目を閉じては、不安になってまた開ける、その繰り返し。
「千花、大丈夫か?」
「…見てられないなら、信長様に言っておくから下がりなよ」
「で、でも…
見てない方が不安な気がする、んだもん…!」
それもそうか、と。
こんなやり合いには恐らく慣れっこな二人は何のことも無いように、また前へと視線を戻す。
それに私も倣っておずおずと視線を向けると、三成くんが大きく刀を振るい斬り掛かる、まさにその瞬間――
私の目には止まらない程の速さだったけれど、受け止める謙信様も去るもの。
いとも簡単にいなし、更には攻めの一手まで。
鋭い突きを三成くんは寸での所でかわし、また後ろに飛び退く、一進一退の鬩ぎ合い。
二人の間を、今の雰囲気に似つかわしくない…春の麗らかな風が吹き抜けた。
――あぁもう…
なんで、こんな事になったんだっけ?