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RISORGIMENTO

第3章 覇道の一里塚 上篇


 それでも、限界は差し迫っていた。大曲西道路からの渡河を阻止に向かった出羽兵2千が川目地区にて放火・略奪をして激発を誘っていた「南部の妖」こと大光寺親季の騎兵部隊に釣り出されて撃破された。これにより、大曲西道路から南部軍が出羽清水軍領土へ浸透を開始し、対岸に陣地を構築して確実に制圧域を増やして行った。

 哀れにも、川を渡って逃げるしかないように包囲された出羽兵と川目の住民達は後方から遊び半分に発砲する大光寺親季の兵達に腕や脚などを撃たれ次々と溺れ、住民を恐怖のどん底に陥れる為に親季によって嘲笑われ、無理に引き上げられて首や四肢を切られた。疲労困憊で泳ぐ兵達は親季の命令により投げ付けられた同胞の首や四肢をぶつけられて衝撃を受け、或者は足を取られて溺れ、或る者は死の恐怖におののきながらもがくようにして泳いで再び笑いの種となった。対岸に辿り着いた者達も、川目からゆくりと見物をして渡河して来た親季の兵に回り込まれて川に蹴り落とされて行き、川目一帯は兵と住民の遺体で足の踏み場もなかった。

 親季は更に工兵隊を選抜して川目の地区会長を生きたまま磔にし、わざわざ危険を侵して砲撃戦の真っ只中の中洲へ移送し、そこへ打ち立てた。出羽方は戦慄と激昂の渦中にあって興奮極まり、東京政府からの駐留兵達は腰が砕け、軍規が壊れ始めた。

 全軍の実質的指揮を採る神前寺鳥海は傍らで歯噛みする主の清水賢一郎をよそに的確に兵の指揮を出していた。しかし、だからこそ、限界が近い事も同時に理解したのである。
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