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RISORGIMENTO

第3章 覇道の一里塚 上篇


 「敷島人」である綾香にとって、寺社教会が武装している事を可笑しく思う事は特段ない。そもそも、自身が正しくその関係者である以上、これが普通である。しかし、雰囲気が少々おかしい。そして、僧兵達から少し「鉛」の匂いを感じた。どこかでやり合って来たのだろう。七宝院は「雇い主」から聞く所に拠れば、現在「日本人」勢力のいずれとも銃火を交わしてはいない筈である。八ヶ岳の麓に本山のある七宝院とぶつかりそうな近隣勢力と言えば、綾香には一つしか思い浮かばなかった。

 僧兵の閲兵を過ぎ、案内役を先頭に七宝院学園の受付まで向かう一行の内、素知らぬ顔で辺りを物色しつつ七宝院を付け狙う「敷島人」について思いを馳せていた綾香とは対照的に、興味深そうに辺りをキョロキョロと見廻していた星河亜紀は、随分と上機嫌な面持ちで、数歩先へ行く引率の樹下へ駆け寄るように歩を早め、その傍らに寄った。

「どうした?妙に嬉しそうじゃないか」

「ここにいれば、異世界の星空を見放題だわ。先生、『緊急特別合宿』を企画下さりありがとうございます!」

 亜紀は心の底から喜んでいるようであった。天変地異以来暫し、鬱屈とした雰囲気に飲み込まれ、流石の亜紀達もげんなりしていた。しかし、緑豊かなこの地で思いっきり部活動に興じられるのなら、何の問題もない。まして、渋谷から暫しある距離の為に、中々行く機会も得られなかった七宝院である。世の中は非常事態であるが、当の本人達にとって、自分達まで事態に呑まれる必要はないのだ。

 実に少女らしい笑顔で傍らの引率の教員の顔を見上げる亜紀に、樹下は少し顔を綻ばせた。

「それは良かった。こういうご時勢だと皆、必死に殻に篭ろうとしてしまうからね。実際、こういう時こそ学問をするには絶好の機会だ。こんな時に部屋に閉じ篭っていたとしても得られる物は無い。怯えるばかりでは何も得られはしないさ」

 ええ、その通りだと思います。亜紀はすぐに返して、亜紀はすぐに返して、盛大な賛意を示した。声に喜びが滲み、足取りも軽やかである。案内役の僧兵はそんな教師と生徒を見て、微笑みつつも、前を向いたまま声を掛けた。

「実に頼もしい、剛毅な方々だ。やはり、学問を志す者はそうでないといけませんな」

 僧兵も鬱屈していたのであろうか。先程より少し、明るい声である。

「ところで、この後どこかに行く予定は?」
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