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RISORGIMENTO

第3章 覇道の一里塚 上篇


 大内山の赤染めの幟を率いる先鋒は間弓孫平次光永の徒組4組総勢1000騎余り。これに本来なら大内山但馬守頼光率いる大内山隊の本隊凡そ8000騎、そして後備を務める唐子川平七郎光資の3000騎が続く陣構えとなるのだが、この度の出陣は高松隼人正を大河内御所勢の総大将とした出陣であり、道案内として間弓孫平次が指揮下に召し出されたに過ぎない。

「霧山からは誰が来られるのです?」

 繭子は多気方面に勢力を持つ、北畠一門の「一頭」である御社家霧山御所の陣立てを問うた。エリナーは続けて答える。

「礫浦様を筆頭に、御社衆の東平寺内膳殿、川上衆の高宮(こうのみや)殿、霧山の本隊から多気武衛殿、大垣右京殿、大沢右近殿、それに景雲真兵殿の御傭組。霧山も本気ね。布陣から見てもわかるわ」

「…また景雲殿ですか」

 繭子は明からさまに嫌そうな顔をした。

 景雲真兵義武(かげくも しんへい よしたけ)は江戸幕府歩兵隊に大和川上村出身の先祖 景雲源太郎(軍記)が雇われて以来、代々傭兵を家業としていると云う景雲一族の若き当主である。繭子は傭兵という職にありながら霧山御所に出入りして扶持まで得ているという景雲真兵に一種の嫌悪を抱いていた。見た目精悍ながらその実は金で奉公先を変え、敵味方を変えてしまう変節漢。繭子にはそうとしか考えられなかった。

 エリナーは内心を秘めるという事を知らない後輩を見て、諦めを促すように続けた。

「御傭組は非正規戦が得意だからね。相手が誰だか分からない今回みたいな戦なら彼らの方がやり易いでしょうし」

 エリナーのそっけない正論は兎も角、この女もいよいよ大河内御所の者となったと繭子は思った。こういう発言を聞くと本当にそう思う。

「紀州は出ないのですか?」

「…出て欲しくなかったけど、出るわよ」

 今度は不快そうな顔をエリナーが浮かべた。紀州については大河内御所の番士達にも嫌う者が多く、景雲を嫌う繭子とは違い、多数派意見となっていた。

「陣立は、鹿瀬鎮堯殿の鉄狼衆、大崎玄蕃(おおさき げんば)殿の南龍騎兵衆、武藤雲平殿の龍騎兵衆、それに新内甲斐守殿の朱鑓騎士衆。そして、下間衆と御目付の貴志霜台殿の供回りを併せて、2万を超すわ」

 赤羽での「日本人」の暴動に対しての動員と言うよりは、赤羽御所への影響力を示す為の各軍勢の腕比べになる、と繭子は考えた。
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