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RISORGIMENTO

第3章 覇道の一里塚 上篇


 大河内御所は先鋒 大内山氏の不動の先手である間弓氏と、ウェールズ兵(と繭子)を与力にした御所内最強の高松隼人正鎮綱勢に、愛洲次郎景虎の草薙騎兵が加わる。

 霧山御所の御社家は主力に加えて当主 政成の旗本である御社衆と川上衆、そして非正規戦のプロ集団である御傭組。

 紀州総督府は配下中でも獰猛苛烈で知られる鉄狼に南龍、加えて鬼雲平に、総督旗本の内、「紀州の張遼」「猛り甲斐」と呼ばれて恐れられた新内甲斐守(あろち かいのかみ)と総督の忠臣にして〈魔人〉貴志霜台義恒を差し向ける。

 彼等は、「嘗て居た世界」において、世界大戦の中挙兵して幕府軍に徹底的に殲滅された敷島共和国内の「日本」民族派勢力〈維新正会〉を討伐した際に、正会の土壌となった、あらゆる事象をこれ以上ない程に殺し尽くした「実績」がある。腕比べはそうやって行われ、殺し、壊し、焼いた数でその腕を競うのである。「嘗て居た世界」では、国内に留まらず、敷島人はアフリカやイタリア、イランでもそのように戦った。敵に属すれば最期、敵方のあらゆる物は徹底的に破壊され、二度と自力復興できなくされてしまう。

 つまり、出兵を認めた幕府総本営と紀州総督府そして北畠家は、敷島人の「祖先」かもしれない「日本人」を明確に、敵、と定めたのだ。

 繭子は先程のエリナーの表情を想い出した。次第に「慣れ」て行きつつも、エリナーにとって、敷島人の判断はやはり異常なのだろう。故国を追われてここまで来た、その挙句が「敷島人」の「日本人」狩りである。客将に遇されている分文句は言えない立場なのだろうが、しかし、彼女の心中を測れば、流石の繭子でも同情を禁じ得なかった。

 繭子も昔はそうは思わなかった。しかし、切っ掛け次第でどうとでもなるのが人間なのだろう。

「姫小松差図役」

 物思いに耽っていた繭子はエリナーの声でハッとなった。

「そろそろ出陣の準備をしないと」

 エリナーの引き締まった声。苦しくとも、覚悟を決めた女の姿と声に促されて、繭子は己の役割を果たすべく、声を出す。

「御意」

 意志の決した二人はそのまま戸口に向かう。
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