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RISORGIMENTO

第1章 流転


 東京・星川軍が撤退した後の谷中一帯には、短時間ながらも激戦の痕跡が確かに刻まれていた。だが…その地形は、街並みは、もはや日本国民が知るそれではなかった。

宇都宮"中務大輔"邦綱
「見慣れぬ奴等であったな。外見も武器も喋り方も、何も彼(か)もが」

那須"下野守"資高
「見慣れぬも何も、かの女武将の格好は何ぞ?怪(け)しからぬ!指揮官も小娘とは、我々の理解を超越して居る。兎(と)も角(かく)、南方の護りを固める必要が有る。先の異変に因る影響、何処まで広がりたるやも調べねばなるまい。京に居る修理資政も心配だ」

 突如現れた新天地、その戦場に佇むのは、「幕府」陸軍将官の宇都宮邦綱(うつのみや くにつな)と、一門の棟梁たる「下野守(しもつけのかみ)」那須資高(なす すけたか)。そして二人の前には、敵軍の本拠地があるであろう、谷中湖の海彼(かいひ)を悠然と見詰める、とても常人には思えぬ肉体を持った「武士」が居た。彼はこの世界で起きている事象に思慮を巡らしつつ、口を開いた。

那須"与一郎"景高
「まずは朝倉殿に情況を確認する。北陸探題が健在ならば、幕府本隊との連携を回復する時間も稼げよう。中央に就いての情報は、兄上や大関頭取が無事であれば送って呉(く)れる筈だ」

 資高の子にして、後に「幕府軍騎兵士大将」と成る関東最強の武者。彼の名は、那須与一郎景高(なす よいちろう かげたか)。

那須景高
「例え世が歪まんとも、我等の生き様は微塵も揺るがぬ事、天下に示して魅せよう!己に対しては過信せず、敵に対しては妥協せず、如何なる理由があろうとも勝ち残る。それが軍人であり、武士と云う者だ!」
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