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RISORGIMENTO

第3章 覇道の一里塚 上篇


 「雨降る砂漠」と呼ばれる、クレーター。日本列島を覆った悪夢を除くと共に数多の命を消し飛ばした、石の雨。思い返すだけでも気分が落ち込んで来る。しかし、あれを以て、日本人を壮大な「実験」の餌食にした、気の狂った政権が叩き折れ、日本人に選択の「自由」が与えられた。今自らも会津の兵権を握る長として日本の先行きを決める舵を争っているわけである。そして、悪夢を除く悪夢から人が再び立ち上がり、未来を紡ぐ学校が築かれ、そこに泰邦清継の子、今となってはたった一人の娘、清子(きよこ)が通っている。

 「流刑地」と呼ばれるこの地にも学校が出来たというのは、生存者皆無の惨状から、改めて「人間が生活を営む」地に変わりつつあるのかも知れない、と清継自身は漠然と考え始めていた。悪夢から覚めてもう長い年月が経過した。列島は未だに深い昏迷状態にあるが、いずれはこの状態も変わって行く事になるだろう。そうあるべきであり、そうして行く力を自分は持っているのだ。二度と敗れない、二度と…失いはしない。そうであってこそ、強き父として、娘に合わす顔ができる、というものだ。

 そうこう思っている内に清継とお付きの士官 広沢富次(ひろさわ とみつぐ)、秋月禎吾郎(あきづき さだごろう)は禍津日原第四学校の校門までやって来ていた。

 心が踊る。胸に込み上げるものがある。清継は久々の愛娘との再会に高揚していた。傍らの広沢や秋月が如何にも付き合わされて疲れた表情を浮かべているのとは対照的だった。

 今行くぞ、清子。清継は勇んで校門をくぐり、

「止まれ」

 制止された。清継は不意に声を掛けられ、思わず軍閥の長に戻った。

「ここに用あるなら、腰の物ともう一丁置いていけ。用ないなら、拘束する」

 声の主は校門のすぐ近くに立っていた。しかし、清継は気配など微塵も感じていなかった。僅かに首を動かし、背後に控える二人の様子を窺うが、両人とも面喰らった様子で、主人だけが惚けていた、というわけではないようである。となれば、余計に渡せはしない。

「用はある。だが、これは渡せないな。今は非常時だ」
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