第3章 覇道の一里塚 上篇
上野は視線をずらした。彰は体を寄せて、上野の首筋に顔を寄せて、僅かに唇を付けた。
「そういや、最近…ご無沙汰ね」
「雌犬か、お前は。こんな場所で」
「ひどい。そういう風にしたのは、あなたでしょ?」
甘い声色で囁く。首筋には生暖かさが感じられた。
「知らんな」
「あら、つれない」
彰はクスっと笑った。こうなると彼女のペースである。
「そ・れ・と、あなた?」
「…何だ」
「…さっき、ルーデルって言ったでしょ?」
「…言ったか?」
「言ったよ。気をつけて」
「ああ、『祇園半次郎』だったな」
「せっかく名付けたんだからね、私が。ちゃんと覚えて」
「…承知した」