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RISORGIMENTO

第1章 流転


 渡良瀬川下流域に広がる遊水地。そこに一人の少女が率いる、小規模な陸軍部隊の姿があった。

星川"執権"結
「おう、良い景色だな!ここがなんとか湖か」

太田"岩月城代"愛
「谷中(やなか)湖です、お嬢」

 彼女らの正体は、北武蔵を支配する星川軍の分隊。大宮に拠点を置くこの軍閥は、関東のど真ん中にありながらも東京政府に従わず、更にその勢力を北へと拡大しようとしていた。その尖兵として送り込まれたのが彼女達であり、若過ぎる連隊長の星川結(ほしかわ ゆい)、露出の多い装甲を纏った軍事班長の岩月愛(いわつき あい)、脱力系な行政班長の長谷堂舞(はせどう まい)、それに士気の怪しい学生隊員の天理陽晶(てんり はるあき)らが居る。

 日共政権最後の拠点であった宇都宮は、激戦によって荒廃し、歴史の表舞台から姿を消していた。共産主義体制を懐かしむ者も少なからず居り、政府への忠誠も、そして政府による統治も安泰とは言い難かった。

天理"武蔵守"陽晶
「で、ここを乗っ取って俺達の基地でも建てれば良いのか?」

長谷堂舞
「今日の任務は偵察だから、もっと北まで行かないと駄目だよw」

星川結
「面倒いなあ…疲れたから少し休ませろ」

岩月愛
「お嬢、しっかりなさって下さい」

 好きでこんな仕事をしているわけじゃない、と言わんばかりに草叢に寝っ転がる星川結。長谷堂・天理も後に続く。無理もない、岩月将軍以外の三人はまだ学生だ。軍閥の娘だから、その友達だからという理由で、形だけの「軍人」をやっているに過ぎない。


 青天白日。天気は快晴、降り注ぐ日光。

星川結
「海は広いし、空は綺麗だし、気持ち良いなあw」

 輝きを増す白。

長谷堂舞
「でも、太陽が眩しいよ~w」

 色彩を失う青。

天理陽晶
「なんか、空の色が変じゃないか?」

 落下する天空。

岩月愛
「…!」

 今ここで起きている事、見えている物が正常でないというのは、誰の眼にも明らかだった。そして、この情況を日本語で表現するならば、それは…。

星川結
「なんだあれ?空が…」

長谷堂舞
「空が?」

岩月愛
「そ…空が、降って来ます…!」

 その瞬間、世界は光に包まれた。闇ではなく、光に…。
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