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RISORGIMENTO

第1章 流転


 東京渋谷にある七宝院(しっぽういん)学園は、甲信地方から進出した、仏教系の学校として知られているが、近年は自然科学にも重点を置いており、理系の部活も存在する。

樹下"ドクター"進
「…次回の講義ではいよいよ、生命の誕生から我々人類に至る、進化論の内容に入ります。生物学の中で最も神秘的で面白い分野です。宗教的な問題も絡むテーマだからこそ、まずはそれがどういう説なのかを、しっかり理解する必要があります。それでは」

星河"青薔薇"亜紀
「あの、先生」

樹下進
「ん、星河さんか」

 地学部長の星河亜紀(ほしかわ あき)が話し掛けて来た。

星河亜紀
「以前仰っていた、私に見せたい本というのは?」

樹下進
「ああ、そうだったな。持って来たぞ、これだ」

星河亜紀
「『宇宙から見た日本』、ですか」

樹下進
「東京に住んで居ると実感がないが、日本は意外と自然に恵まれた国なんだ。衛星写真で見ると、それが良く分かる」

星河亜紀
「なるほど」

樹下進
「それから、日本列島の形成史も調べて見ると楽しいぞ。日本の歴史じゃなくて、日本列島その物の歴史だ。『イザナギプレート』なんて用語もあって、なかなか壮大な話だ。興味があるなら、『日本列島の自然史』を読んで見ると良い」

星河亜紀
「あ、はい。アドバイスありがとうございます」

樹下進
「『地球科学』だから地球全体の事を学ぶのも良いが、日本だけでも研究テーマの宝庫だ。少ないが化石人骨も発見されているしな」

 著名な人類学者の樹下進(きのした すすむ)は、本業の大学教授のほか、多くの学校で自然科の講師を兼任している。若い頃から高度な研究をしていたそうだが、詳細は不明。

高瀬川湊
「…亜紀、本日のお昼御飯はどうする…?」

星河亜紀
「いつも通り、文化館で良いでしょう」

瀬田"三花剣"椿
「そうだな」

 彼女は友人の高瀬川湊(たかせがわ みなと)・瀬田椿(せた つばき)と共に売店に向かい、ついでに今月の地学部活動届けを、顧問の海棠雄也(かいどう ゆうや)に提出した。こうして、いつも通りの一日が過ぎ行くはずだった。

十三宮幸
「…あの白衣が、姉さん達の言っていた樹下教授か。大牧先生の恩師らしいけど…ん?結からメールだ。あいつ今、どこに居るんだっけ?岩月さんは確か、偵察って言っていたけれど…」
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