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RISORGIMENTO

第2章 流転の刻に


 ―福井平野(越前守護管区)一乗谷―


「…そうか、皆無事か」

「はい、ホントに良かったですぅ。心配して寿命縮んじゃいましたよぉ」

 京に居る血縁者やその者に従う配下全てが無事であったとの朝倉夕子の報告を受け、一乗谷の朝倉宗景はやや顔を綻ばした。歩美は京にて情報探索中の朝倉早矢子から夕子を探して貰っていた事は言わなかった。言えば、朝倉家中が大騒ぎで京に雪崩込んで連れ戻しに行くはずだからである。取り敢えずそれがバレていない所も安堵していた。一方で、隣で険しい顔の弟に気付いた宗景は、終始安堵顔の報告者、萩原歩美とは対照的に厳しい顔に戻さざるを得なかった。

「歩美、他には?」

「え…。あ、あの、えぇ~とぉ…は、はい。何も…聞いてないですぅ」

「…よい、わかった」

 只の会話で気の弱い歩美は縮こまってしまった。先代当主 宗景すら萎縮させるこの弟 朝倉尊景入道は、夕子の大雑把な性格を気に入ってはおらず、案の定この状態であり、心底呆れた。尊景入道の傍らで三人の姿を見ていた歩美の父 萩原長俊はお決まりな光景に思わず笑ってしまった。尊景は訝しそうな目で長俊を睨んだ。

「何を笑っておる?」

「いえ、いえいえ。只変わらぬな、と」

「何がだ?」

「これ程の事が起きたというのに、何時も通りで安堵したので御座いますよ。取り敢えず、北陸探題は安泰、と」

「…越前には?何か来ておるか?」

「今現在では何も。只、予想通り北畠殿から親書が来ておりますが、これはおそらく」

「大河内具家(おかわち ともいえ)か」

「御意に御座ります。彼の意思による物と見て間違いないかと」

「…あれは誠に厄介な奴だ。親書一つでも警戒を怠ってはならぬ」

「心得ました」
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