第2章 流転の刻に
皆が二人に注目する。二人をよく知る宇都宮実子はその一致の先を予想して少なからず顔を曇らせた。
「敵将が如何なるものかは捕えた兵の口からもおおよそ分かり申した。あの女将軍を討ち取れば敵は分裂致しましょう。だからこそ、この度の緒戦のようにはそう簡単に現れんでしょう」
相馬がかくも語る時は、余程自信があるのだと皆が分かっていた。そして、主の那須が続けて口を開いた。
「恐れながら、望むべき合戦にはあの親子を引きずり出さねばならないかと存じます。そのようにせねばなりません」
「して、何とする?」
邦綱の問いに景高は静かに、そして淡々と答えた。
「親子が怒り狂う様に、彼の国を焼き払います」
この言葉の意味を知っている者は、誰もが身を震わせたという。
戦場に、天がこれから数多起きる悲劇を感じたのか、音を立てて雨粒が落とされていた。