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RISORGIMENTO

第1章 流転


 奥の目立たない長椅子に、瞑想しているのか、居眠りなのかも分からない様子で眼を閉じている青年、十三宮顕(とさみや あきら 富田巌千代)の姿があった。この者はかつて、学生運動や地域教育に、在野で取り組んだ篤志家だったらしいが、私欲と利権が物を言う世の中を見限り、今は教会に奉仕しながら文筆に励んでいる…などと、本人は称しているが、自身も結局は煩悩の凡夫だろう。星川家とも親しく「寿能城代(じゅのうじょうだい)」と呼ばれる。

十三宮聖
「何かお考えで?」

十三宮顕
「いや、面白いなと思って」

 富田寿能は、海洋深層水を飲みながら笑った。

十三宮聖
「と、言いますと?」

十三宮顕
「私は学生時代に朋友達と、『もし2次元と3次元の世界が融合したら』、みたいな小説を企画した事がある。まあ良くある設定に過ぎないのだが、まさか本当にこんな事になってしまうとは…」

十三宮聖
「うふふ、そうですね」

須崎優和
「過去と未来との収斂(しゅうれん)、それが今ここにある『現在』という事ですね」

十三宮幸
「その結果、未来の日本列島から来てくれたのが、あの『敷島共和国』とか言う武装集団なのか…全く以て、迷惑極まりない『異世界転生』だ…」

十三宮聖
「確かにその通りなのですが、私はそれだけではない気が致します」

十三宮顕
「具体的には?」

十三宮聖
「これは過去と未来との衝突であると同時に、国家論…『日本』を如何なる国にせんと望むのか、その葛藤の結果なのかも知れません。この日本帝国を生きる私達が、ある日は誰がこの国を治めるべきかを争い、またある日はどの思想が衆生(しゅじょう)を導くべきかを競う如く、過去の人々も、そして未来の方々も、同じような事を考えていらっしゃるでしょう。その答えを一つの世界で導こうとするならば、それはきっと、このような形になるはずです」

十三宮顕
「歴史が我々現代人だけのものでないならば、他の時代の者達と同じ天の下に生きて見よ…と?」

十三宮仁
「なるほどー」
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