第1章 流転
須崎"グラティア"優和
「はい、どうぞ。採れ立ての海洋深層水ですよ」
十三宮幸
「…美味しい」
十三宮仁
「わーい、ありがとうございます^^」
この相模湾教会を含む「十三宮教会」は、日本国教会の中でもやや異端的な「蛇遣い派」に属し、その司教は十三宮家のシャーマンが世襲している。現在の棟梁は十三宮聖(とさみや ひじり)で、その妹が十三宮仁(とさみや めぐみ)である。深海をイメージした神秘的な聖堂内には、相模湾教会司祭で海洋学者の須崎グラティア優和(すざきGratiaゆうな)や、禍津日原第四学校にて社会科教諭を務める、布施朋翠(ふせとも あきら)らの姿もある。
十三宮聖
「上帝様も、物好きな事をなさいますね。我が国の真上に、その遥か未来の姿をお重ねになるとは」
布施朋翠
「悪魔の所業だったら?」
十三宮聖
「さあ、どうでしょうね?」
あの小惑星・隕石が、神や悪魔の意志だったとしても不思議ではない、と信ずる彼女らにとって、この程度の「奇跡」は、格別取り乱すほど驚くには値しないようだ。
布施朋翠
「私は、大牧さん達との連絡を試みる。情況次第では、禍津日原に向かうかも知れない」
十三宮聖
「畏まりました。何があるか分かりませんので、くれぐれもお気を付け下さい」
布施朋翠
「ありがとう」
なお、この二人は初恋の相手だったらしい。
須崎優和
「聖様、これは絶好の機会です!敷島の方々に伝道し、ついでに海洋深層水をマルチマーケティングすれば、一生遊んで暮らせますよ!」
十三宮聖
「もう…あなた様はいつも、お金の事ばかりですね…」
十三宮幸
「確かに」
十三宮仁
「ところで、あっくんはいつまでおねんねしているのかな?」
十三宮聖
「あら、そうでした。すっかり忘れていましたね」
須崎優和
「富田様、海洋深層水は如何ですか?」
十三宮"寿能城代"顕
「あ、どうも。ありがとうございます」