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RISORGIMENTO

第1章 流転


葉山円明
「そんな事より、女帝の考えは?」

光復女帝
「我が国と致しましても、敷島の中でも友好的な方々を、積極的に登用して行くべきでしょう。本件では、既に堯彦が動いております。しかし、関東平野の統治すらままならないという現状は、あまりにも不安定です。ゆえに、建」

日基建
「何でしょうか?」

光復女帝
「そなたには、どうしても心を許せぬ者が一人おりましたね。かつて共に国を治め、深き信頼があったからこそ、袂を分かった傷も大きい…そんな方が」

日基建
「は…」

光復女帝
「予はかつて、帝位をめぐって弟と争い、その怨(えん)を長く引き摺っておりました。ですが今、こうして堯彦と手を携え、彼が言う所の『美しき国』を共に築かんと決意しました。建も今こそ、過去を乗り越えるべき時ではありませんか?」

 女帝は首相に、一通の書簡を渡した。それは星川初が密使を介して帝に宛てた、星川と東京との同盟を求める物であった。最早(もはや)、彼に迷いはなかった。

葉山円明
「どうするのですか、首相?」

日基建
「…日本帝国政府は、我らへの協商を条件に、星川武蔵県令の『自治共和国』を暫定的に承認する」

葉山円明
「それは、つまり…」

日基建
「我ら『東京』は、宿敵『星川』と同盟する!」

 「埼京戦争」と総称される、星川軍との衝突を幾度も指揮して来た日基首相。そんな彼の決断に動揺を隠せない葉山次官の耳元に、自ら撃墜される程の激戦を生き延びた不死鳥、遠野隊長が囁(ささや)く。

遠野衛
「…円明、良く見ておけ。資本主義者達の生き様を、その行く末を。旧共和国の崩壊は、我々の存在意義に激烈な疑問符を突き付けた。それに対する答えが、この戦いの中に、その先にきっとあるはずだ」

葉山円明
「始まるのですね、戦争が」

遠野衛
「ああ。極東アジアのレコンキスタ(Reconquista)が、大和のリソルジメント(Risorgimento)が…」
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