第1章 流転
日本帝国の政治体制はややこしい。建国に際する左派と右派の対立と妥協の結果、英米法なのか律令制なのか、良く分からない憲法が出来上がった。
言うまでもなく、この異変で最も大迷惑を被ったのは東京政府である。ただでさえ国内が分裂状態だと云うのに、この上更に「新勢力」が勃興したのだから。現在の主な政府要人を挙げると、君主たる光復帝雲母日女(こうふくのみかど きらひめ)を国家元首として、首相こと太政大臣の日基建(ひもと たける)、九州筑前にて西海州政府首相を務める吉野菫(よしの すみれ)のほか、女帝の寵愛を受ける遠野フォイニクス衛(とおのPhoinixえい)・葉山円明(はやま えんめい)ら近臣達が居る。
葉山円明
「首相、一大事です!畿内軍閥が、敷島勢との同盟を締結した模様!」
日基建
「何だと!おのれ豊臣め…京坂神(けいはんしん)だけでは飽き足らず、未知の軍事政権と結託してまで私に逆らうかッ!」
葉山円明
「やはりここは、イザナミ再稼働も辞さない覚悟で当たるしかないのでは?」
日基建
「愚者かお前は?そんな事をすれば、吉野が離反する。それに我らは、法を以てこの国を律する自由主義者だ。意味不明な理論に惑うコミュニストや、口先の愛国しか能がない九段坂風情とは、格が違うのだぞ!」
遠野"フォイニクス"衛
「少しは落ち着け、建。円明も、あまり急進的な事を言うな。大元帥の機嫌を損ねるぞ」
"光復帝"雲母日女
「…建、お疲れのようですね」
日基建
「こ…これは女帝陛下、いつの間に?」
光復女帝
「この非常時に、臣からの奏上を呑気に玉座で待って居られる程、予は虚(うつ)けではありませんよ?」
日基建
「…御無礼を申し上げました、何卒お赦しを!」
遠野衛
「ふっ…相変わらず面白い君臣だ」