第30章 IF遙か3~復活~戯言編3(薬師視点・人識)
……料理ができないわけじゃありませんからね、戦国な時代では和食しか作る機会がなかっただけですから!!
そんな誰に向けるわけでもない言い訳を心の中でしつつ、隣を歩く人識くんのひょこひょこ揺れるまだら色に染まった尻尾髪を眺めながら、頭に浮かんだお店を口に出す。
「今日は、美味い安いで定評のある牛丼なんてどうでしょう?」
「特盛で?」
「いえ、並盛つゆだくヒヨコのせで」
「ひよこ?」
「間違えました。卵のせで」
「どんな間違え方だよ。ところで、これはもうすでに終わった話なんだが……夢姫は、心ってどこにあると思う?」
「心、ですか?それはまた、あるかどうかもわからない抽象的なものを持ち出してきましたね」
「ないって言うのか?」
「あるとも言い切れないでしょう?」
「まぁ、そうなんだけど。それじゃ話が進まないどころか始まりもしないじゃねぇか、あると仮定して答えてくれよ」
「そうですねぇ、あるとしたら……うーん…………やっぱりわかりません」
「そうか……」
「目に見えない不確かなものがどこにあるのかなんて、誰にもわからないと思いますよ?その代わりに、その人がそこにあると思えばあるし、どこにもないと思えばないのではないでしょうか」
「曖昧でふわふわしてて、いまいちしっくりこねぇ答えだった」
「いいじゃないですか、もう終わった話なんですから」
「まぁな」
そう頷いてから少し間を置くと、人識くんはこちらをチラリと見て。
じゃあ……と再び口を開いた。
「殺人鬼に心はあると思うか?」
「人間にあるのであれば、あると思います」
「その心は?あ、やべぇ、心と心が被った」
「日本語はややこしいですから、そういうこともありますよ」
「うん、まぁいいか。で?」