第29章 IF遙か3~復活~戯言編2(薬師視点・人識)
「……まずかったら、あんたを拾った場所へ捨てに戻るからな」
「死ぬ気でなんとかしてみせます」
某マフィアの10代目じゃありませんけど。
それにしても……これがかすが嬢でしたら、男の装いでこんな風に接すれば、その白い頬を薔薇のように赤く色づかせ、憎まれ口を叩きつつも愛らしく恥じらってくださるというのに。
キレイなおねーさん好きな人識くんには通用しませんでした。
まぁ、かすが嬢も女姿の私には当たりが厳しいというか激しいというか、ちょこちょこ存在を消しにかかっているのでは?と思うような行動をとってくるのですけれどね。
毒を盛られたりクナイを突きつけられたりBASARA技をかけられるのは日常茶飯事でした。
…………よく生きてましたね、私。頑張った、うん。
「はい、できましたよ」
「お、おおっ、すっげぇな!!」
さきほどの台無しプリン・アラモードへ新しくプリンを二つのせると、ありったけのクリームをムニニ~ッと絞りつけ。
昨日作って余っていたクルミ入りチョコブラウニーを小さく切って、ころんころんと散らばせて。
刻んで溶かした簡易チョコソースを上からとろ~りかけたら、カットした果物とクッキークランチにウエハースをさらに追加して。
特大どころか特盛り山盛りプリン・アラモードの完成です。
召し上がれという前にスプーンをプリンへ突き刺した人識くんが、次から次へと休む間もなく口をもぐもぐ動かす姿を胸やけしそうな気分で眺める。
「お味はいかがですか?」
「んむむ!」
「すみません、私が悪かったです。どうぞ、心ゆくまで食べてください」
そんなに口いっぱい頬張らなくても、と思いつつ……喋ることもできないくらい夢中になって食べ続ける姿に、ほっと安堵した。
どうやら不味いということはないようですね、よかった。
頬をぱんぱんに膨らませている人識くんに、昔々に飼ったことのあるハムスターを思い出して口元がにやける。
ああ、可愛い。
その頬をぷにぷに突いて頭を撫でて抱きしめて、思う存分愛でまくりたい。
実際にそんなことをしようものなら、どのような反撃をくらうかわからないので行動に移すことはできませんけれど。
見てるだけならいいですよね?くふふ、癒しです、癒し。