第28章 IF遙か3〜復活~戯言編1(薬師視点・人識)
血の臭い……特徴的な笑い声……奇抜なファッションセンス……右頬の刺青……。
ひとつひとつ、パズルのピースが合わさりぴったりくっついて出た答えに。
「ぜろざき、ひとしき、さん」
「さん、なんて付けなくていいって」
「わかりました。では、ひとしきくん」
「あー、なんかどっかの変態を思い出す呼称だがしょうがねぇか」
「へんたい?」
「気にすんな」
正直、命がけで逃げ出したくなりながらも、生きる為にはこの少年を逃してはならない。
そう、腹をくくった。
「お願いの方なんですけれど……」
「ああ、なんだっけ?」
「私を雇ってもらえませんか?」
「は?」
零崎人識くん。
きっと私は多少なりともお役に立てると思うのです。
運動神経はどうしようもないけれど、体力はそこそこありますし。
一応身を守る術も持っていますし、怪我をしたり体調不良をおこしたら完全に治すことができます。
衣食住のうちの住……居場所だけ提供していただければ、あとは自分でなんとかしますので。
どうか、どうかお願いしますこの通りです!!
「おい、やめろよ、地面に勢いよく頭打ちつけて土下座なんてすんな、見てるこっちが情けなくなる」
「いいえ、やめません。お願いを聞いてくださるまでは、たとえ火の中水の中草の中森の中土の中雲の中あの娘のスカートの中どころか人識くんのプライベート中のプライベートな時間まで追いかけ続けて土下座する所存です」
「マジでやめろ!」
「嫌です、絶対にやめません」
「っ……わかった、わかったから!頼むからそれだけはやめてくれ」
「ありがとうございます!!」
殺人鬼、ゲットだぜ!
あの零崎人識をここまで困らせたるただの一般人も、なかなかそうは居ないのではないでしょうか?
そんなことを聞いたらきっと、骸さんや雲雀さんあたりは。
誰がただの一般人なんですか?図々しいにもほどがありますよ、とか。
きみのどこが一般人なの、ちゃんと意味と定義を理解してる?とか言いそうですよね……。
なんと言われようが私は一般人で、一介の薬師で、ちょーっと規模が大きいだけなただの迷子なんですよー!!