第28章 IF遙か3〜復活~戯言編1(薬師視点・人識)
どうもありがとうございます。と、携帯する電話を返しながら少年に向かって、この地域は?名称は?知っているか聞いたことはあるか。
リボーン世界ではそこそこ名の知られている、当たり前にある地名をたずねて。
「聞いたことねぇな、本当に実在するのか?そんな場所」
訝しげな表情で、うーんと首を捻って見せる姿に。
衝撃をうけると同時に、まさかまたか!という思いと、やらかしてくれた骸さんへの怒りがふつふつと湧いてきた。
「そう、ですか……変なことを聞いて、すみません」
「あんた、大丈夫か?俺が心配するのもおかしすぎる話だが、ここで放置して野垂れ死にでもされたらせっかく見逃した意味もなにも無くなっちまうからなぁ」
「……きみ、優しいんですねぇえ」
「うわっ、ちょ、泣くなよ!あと俺は優しくなんかねぇからな、鬼の目にも涙なんてあっちゃダサすぎるだろ」
「うっ、ううう……!!」
「あーっ、だから泣くなって!」
だって最近、こんなにわかりやすい優しさに触れたことなんてなかったものですからっ!!
周りの皆さん、どいつもこいつもエスっ気発揮しまくるわ素直じゃないわツンドラだわ捻くれてるわで。
嬉しいんです、あとすごく不安だったからほんの少しですけれど安心してしまって……。
ぼろぼろとは言わずとも、ほろりとたまに流れる涙をいかにも慣れていない乱暴な仕草で、少年がグイグイ拭ってくれる。
困らせてしまって、すみません…………でも、あの、痛いです。
できれば、もうちょっと加減してくれませんかね?皮膚がごりごり削れていく気がしますよ。
痛みで気が紛れたのか、涙なんてすぐに引っ込んだ。
「……もう大丈夫です、ごめんなさい。ありがとうございます」
「はぁ、手間のかかるおねーさんだな。見た目だけでいうと、しっかりしてそうなんだけど」
「重ね重ね、すみません。申し訳ないついでに、質問とお願いがもうひとつずつ」
「……今度はなんだよ?」
「まずは質問です。少年のお名前を聞いてもよろしいですか?あ、私は三次元夢姫と申します」
「ふーん、三次元夢姫……な。俺は、零崎人識」
とてもとても個性的な名前に、久しぶりに古い記憶が揺さぶられる。