第28章 IF遙か3〜復活~戯言編1(薬師視点・人識)
こんばんは、お元気ですか?謙信様。
本来ならば、もっと早くにそちらへ帰れる予定だったのですが。
うっかりマフィアなんていう、裏稼業の方々のあれやこれやに巻き込まれ。
内輪だけのお疲れパーティー……そちらでいうと宴になりますかね、それに参加していましたら。
未成年のくせに何故か酔っぱらってしまっていた特殊能力をもつ方の手違いで、見知らぬ場所へと飛ばされてしまいました。
「……ここは、どこでしょうか?」
建物の感じからいって、現代のようですけれど。
時間的には夜です。
戦国の世や源平合戦の時代とは違って、遠くに明かりが見えたり……いやでも、けっこう暗いな。
月や星といった自然の光が弱いぶん、こちらはこちらで夜は暗いです。
闇はどこへいっても闇でした。
「さすがに世界を越えた、なんてことはなさそうですね」
いくら骸さんが規格外な能力の持ち主で、私という不安定要素を掛け合わせたら奇跡レベルの現象を起こせるとはいっても。
あの人、酔っぱらってたし。咄嗟で私もわけがわからなかったし。
そんな簡単に、ほいほい違う世界への扉が開いてたまるかって話ですよね。
「うーん……誰かに、連絡を取るしかなさそうですねぇ」
パーティーの最中だったものですから、思いきり手ぶらです。
せっかくだからと着替えまでさせられていたので、お金どころか常備していた薬の一つすら持ち合わせていない状態。
ああ、落ち着かない。
もうすっかり着物に慣れていたものだから、久しぶりに着たワンピースだとかヒールのある靴だとかが動きづらいといったらありません。
「どこかに、コンビニとか……」
きょろりと辺りを見回してみるも、どうやらどこかの裏路地みたいな場所のようで。
迷路みたいな細道が、途中で枝分かれしながら続いていることしかわからない。
仕方ないと諦めて適当に足を進めていると。
「…………これは……」
ここ最近で、またもや慣れすぎてしまった血の臭いが横道の方から漂ってきていた。
よし、戻りますか。
こんな見知らぬ場所で、誰も知り合いがいないときに、なんの装備もなしに。
死亡フラグが待ち受けていそうなところへ足を踏み入れる勇気はありません。
そうと決まれば、くるっと華麗にその場でターン……しようとして失敗した。