第26章 主なお客様は女中さん方です(薬師視点・佐助)
『佐助……おまえが何と言おうと、俺から離れることなど許さぬ』
『旦那、でも』
『黙れっ』
『ぅあっ!?ちょっ……』
『おまえは、俺の、ものだ』
『っ……は……だん、な』
+ + +
「なに、コレ?」
「…………」
目の前には、背筋が凍りそうになるほど素敵な笑顔の佐助さん。
そして、その手には。
見覚えのある、手作りの小冊子。
「部下の一人がさ、妙な物が女中の間で出回ってるって言うから調べてみたんだ」
「…………」
「もちろん、知ってるよね?夢姫ちゃん」
「…………」
「だって、製作者だもんなぁ?」
「っ……す、みません!ごめんなさいっ、つい、つい出来心で!!」
「つい出来心で、どうしてこんな話を書くんだよ、あんたは!!」
「ちょっと刺激が欲しくて書いてみたら、予想以上に楽しくてっ」
「だからって、真田の旦那と俺をつかうことないだろっ」
「だーって、ここの皆さん、二人の恋仲物が好きなんですよー!!人気のあるものを書いた方がよく売れるしっ!!」
「結局は金かっ、コラッ!!罰として全部、没収!!」
「えぇぇええ~~~~っっ!?佐助さん、横暴ですっ」
「へぇ、じゃあ旦那にバラしてもいいんだ?」
「私が悪うございました。売り上げは全て差し上げますので、なにとぞご内密にお願いいたします」
あの純情可憐(間違った認識です)な幸村さんに変態扱いされたら、さすがの私も簡単には立ち直れません。
そんなわけで、残念ながら執筆活動はこのたびで店じまいとなりそうです。
短い間でしたが、ご愛読ありがとうございました。
ああ、最後に。
近々、在庫処分をいたしますので……欲しい方は私の部屋までどうぞ。
合言葉は『赤?』『緑』『受け?』『攻め』『リバ?』『有り』ですよ。お間違えなく~。
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こうして幸村さんの耳におかしな話は入ることなく、武田軍の平和は優秀な忍たちによって保たれたそうです。
忍に内緒で同人活動とか無理そうですよね、弱みを握って仲間に引きずり込むしかない……果てしなく難しい案件。
佐助:夢姫ちゃん、頼むから仕事増やさないでくれない?
夢姫:佐助さん、人間生きていくには夢というものが必要なんですよ
幸村:なんの話でござるか?