第23章 IF遙か３〜復活編４(薬師視点･骸)

「そう睨まないでくれませんか？恐怖のあまり、視界が涙で滲みそうです」

「あからさまに嘘つかないでください。どのツラ下げて、私ごときの睨みが怖いとおっしゃいますかコノヤロー」

「このツラですが、何か文句でも？」


サラリとそう言い放つ顔はとても整っていて、文句のつけようがありません。

変態的な笑いでもこぼしていれば、また話は別ですけれど。

残念ながら真面目な表情をしている彼は、むしろ…


「顔に文句はあらませんよ、ええ。全くありませんとも、むしろカッコいいとすら思ってます！」

「……それは、どうも」


心の本音をもらした途端、ヤツは私から微妙に視線をそらしました。

まぁ、なんて失礼な美少年なのでしょうか。

自分だって内面では人のことなど言えないでしょうに。


「あ、今ちょっと引きましたね？私の本音を聞いておかしな女だと認識しましたね、当たりでしょう？」

「それは出会ってすぐに思いましたから、今さら認識し直す必要はありません」

「あら、そうでしたか。それはそれは…お互い様ってやつですね」

「…クフフ」

「…ふふふ」


お互い、春の陽だまりの中にいるような微笑みを浮かべつつ、周りにブリザードを巻き起こしております。

こうなったら、とことん応戦してやりますとも。

くるならこいですよ、面倒ですけれど今日は受けて立ちましょう骸さん！

心の中で気合いを入れ直し、相手の出方を待っていると。


「……」

「…？」


ただ冷たいのとは違う、感情のうかがえない眼差しを向けられ。

驚くことに、その長い指で優しく髪をすかれた。

ぱちぱち目を瞬かせてじっと見つめていると。


「なんですか？そんな目で見つめないでください、不愉快です」

「だったら驚くようなことしないでください、天変地異が起こるかと思いましたよ」

「……」


痛い、額を小突かないでください、地味に痛いです力強いなぁもう！