第23章 IF遙か3〜復活編4(薬師視点・骸)
わざわざ人をからかう為に幻を?……この少年ならやりかねませんね。
クロームさんも大変ですよ、まったく。
そんなことを頭の片隅でぼんやり考えつつ、眉を顰めると涙を手の甲で荒っぽく拭う。
「クフフ…そんなに擦っては、肌に傷がつきますよ」
「うるさいです、余計なお世話です。しかもナイチンゲールってなんですか?…ああ、小夜啼鳥(さよなきどり)のことですか。それはそれは……今度はいったい、どんな皮肉か嫌みなんでしょうね」
いつものように、顔を取り繕うことができない。
きっと私の顔は今、ひどくひきつった笑みを浮かべているに違いない。
現に、骸さんからの反撃がない、さすがの彼も呆れているの…
「少し、黙りなさい」
「………え」
一瞬、思考が止まった脳はまだまだ動きが鈍くて。
ちゃんと、まともに考えることができない。
私は今、どうなっている?骸さんは、いったい…?
「……え……は?あ、あの、骸、さん?」
「なんですか?」
「え、いやその、なんですかって…むしろ、こちらの台詞ですよね?」
「クフフ、言わないとわかりませんか?随分と頭が鈍っているようですね。早くも老化現象ですか、夢姫。それはご愁傷様です」
いつもながら素晴らしく人を小馬鹿にした言い回しに状況も忘れかけて、そちらがそのつもりなら遠慮なく言い返して差し上げますよ?ふふふ…。
…なんて思って口を開いたら、一足先に骸さんの声が聞こえた。
「あなたを、抱きしめているんですよ」
「………」
「おや、また思考停止ですか?年齢のわりに可愛らしい反応をしてくれますね……聞こえていますか?夢姫」
「っ………はぁ……年齢のわりに、は余計です。セクハラで訴えますよ?とんでもない中学生ですねパイナッポー頭さん、さっさと離してください」
耳元で囁くように聞こえてくる声に、取り乱しそうになりながらも堪えて。
何故か抱きしめられているこの状態を何とかしようと、骸少年の腕の中でもがいてみる。