第17章 遙か3な世界へ・伍(薬師視点・白黒神子・弁慶・ヒノエ)
この部屋にほかの皆さんが居ないのも、私が静かな中でゆっくりできるようにとの配慮なのだろうし。
弁慶さんは職業柄ゆえ放っておくことができず、わざわざ一人だけ残ってずっと様子をみていてくれたのでしょう。
「いえ・・・わかってくだされば、いいんです。いくら心配したとはいえ、僕も少々物言いが過ぎましたね。すみません」
「そんな、私が大人げなく浮かれすぎたのが悪いんです。心配かけてすみません。それから、傍に居てくださってありがとうございます」
「・・・いいえ。これくらい、かまいませんよ。どうやらあなたは有能なわりに、自己管理の苦手な薬師のようですから。あなたが僕の仕事を手伝ってくれている代わりといってはなんですが、これからあなたの体調管理は僕が手伝うことにしましょう・・・いいですよね?夢姫さん」
そう言った弁慶さんは、珍しくやわらかい表情をしていて。
おまけに頭からかぶっている黒い外套?をちょこんと指先でつまんで、小首を傾げたりするものですから。
またその仕草が、25歳な男のくせに似合っているものだから。
とてもとても、とっても、とぉーーっても、可愛いものですから!
「・・・・・・はい・・・よろしく、お願いいたします」
頷く以外の返答なんて、私にできる筈もありませんでした。
あれって絶対に、わかっていてやっているんですよ。
自分の魅力を最大限に引き出した上で、人を誑かす術をも熟知しているだなんて。
なんて恐ろしい方なんでしょう・・・!!
数刻後、すっかり元気になって食事を取りはじめた私に。
ほかの皆さんからの説教が、延々と続いたのでありました。
でも、一人だけ。
説教ではなく、口説きにこられた方もおられましたけれど。