第16章 遥か3な世界へ・四(薬師視点・白黒神子・ヒノエ・弁慶)
熊野に着きました。
どうも、熊野水軍とやらの頭領…別当殿に会うため、しばらくこちらに滞在するらしいです。
やっと休めますよ〜。
いくら体力がついたとはいっても、やはり野宿はキツイものがあります。
それになんといっても、ここには温泉があるんですよ!?
久しぶりのお風呂っ。
ああ、なんて素敵なところなんでしょう熊野って、大好きです!!
「望美さん、朔さん。温泉いきましょう、温泉っ」
「え、もう入るんですか?夢姫さん、着いたばかりですよ」
「夢姫殿、もう少し涼しくなってからの方がよいのではないかしら」
「朔さん……そうですよね、まだ暑いですよね…」
私としては、暑くてもいいから何回でも入りたいくらいなのですが。
さすがにこう、年下の子に諭されては我を突き通しにくい。
はぁ……せめて、夕暮れになるまで待ちますか。
「なんだ、癒しの姫は温泉が好きなのかい?」
「ヒノエさん」
紅い髪をふわりと揺らし、熊野出身な美少年が近づいてきました。
“癒しの姫”って……すごく恥ずかしい呼び名なので、やめてほしいのですが…。
いつの間にそんな通り名をつけたんですか、私は許可した覚えはありませんよ。
まったく……何度言っても、改めてくれないんですよね。
そのうち、隠している渋い本名で呼んでしまいますよ?このやろー。
―――に、しても。
ヒノエさんって、なんか良い匂いがするんですよねぇ。
何かつけているんでしょうか?
そういえば、同じく熊野出身な弁慶さんからは、私にも馴染み深い薬草の香りがします。