第15章 遥か3な世界へ・参(薬師視点・白龍)
謙信様、お元気でしょうか?
謙信様のおられる世界から姿を消して、早くも数十日が経ちましたが、私は元気です。
きっと、謙信様とほかの皆様は、私が元いた場所へ帰ったかと思われたことでしょう。
しかし残念ながら、私はまたもやどこか別の世界へと旅立ってしまったようでございます。
今いるこちらも、なかなかに危険の多い場所でした。
なにしろ、初めて遭遇した人は大怪我をして倒れていましたし。
その上、正確に言えばその人は人ではあらず…いえ、人だったと言えばよいのでしょうか。
一度その命を終えて、特別な術によって再び、この世に戻ってきた方だったのです。
仮死状態から生き返ったというものとは違い、無理やり魂を呼び戻されておりますので。
やはり正常な状態ではいられず、自分の意思とは関わりなく暴走してしまうようなのです。
ああ、でも、安心してください。
その方はとても優しい心根の人物で、とりあえずは暴走を抑える術もありますから、今のところは安全です。
こちらでは、信じられないことに、怨霊というものが実際に存在しております。
その怨霊たちは生きた人間を襲うため、大変恐れられております。
おまけにどうも、近頃は特にあちらこちらで現れて、皆さん困っているようなのです。
その発生率の高さはまるで“ゴ●ブリ”のごとく。
人々を恐怖に陥れるところまで同じとくれば、怨霊がどんなに悲劇的な存在だとしても、私が同情できるわけもありません。
いつもいつも、遠慮なく倒され封印されていくのを、後ろで眺めさせてもらっている日々です。
ああ、そうです。
伝え忘れていたことが、ありました。