第8章 酒は飲んでも呑まれるな(薬師視点・政宗・謙信・小十郎・かすが
いろいろと鋭い謙信様のことですから、私の胸が出逢った当初から変わらないことなど、とうの昔に気づいていることでしょう。
その上で私を気遣い、心を抉るような発言は控えてくださっているに違いありません。
「Really?てっきり軽く手を出されているとばかり思っていたが…」
「そっちの触れるじゃありませんっ、話題に触れるという意味です」
「なんだ、じゃあやっぱり手は出されてんのか」
「それはっ……今は、どうでもいいじゃありませんか」
「怪しいな」
「そこは、ご想像にお任せします」
もう本当に、どうでもいいじゃありませんか。
繊細で柔らかい部分を、興味本位で突つかないでいただきたい。
たとえ何もなくても……いや、なかったらないで答えるの恥ずかしいですよ、逆に。
「まぁいい、いずれ嫌でもわかることだ。夢姫、酔っぱらいどもは置いといて二人で飲みなおすぞ」
「いえ、私はもう…」
「そう、つれないことを言うな。こんなに美味い酒は、そう手に入るもんじゃねぇ…たまには頭を空っぽにして楽しめよ。何かあれば、俺が責任もって面倒みてやる。OK?」
「……わかりました。では、お言葉に甘えて頂戴いたします」
「Ha!そうこなくちゃな」
体を離して対面に座した政宗様が、手に持った杯へ酒を注ぎ差し出してくる。
しずしずと受け取ったそれを軽く掲げて微笑み、くいっと一気に飲み干した。
冷やりとした液体をのどへ流し込んだのに、じわじわ熱くなる感覚が不思議にも心地よい。
「ふぅ……ああ、おいしいですねぇ」
「なかなかイケる口じゃねぇか。ほら、もう一杯」