第34章 事故チューその後・壱(薬師視点・佐助)
幸村さんとの思わぬ『 事故チュー 』から、一日が経過しました。
あれから幸村さんは、とことん私を避けております。
ちょっとせつなー……ぃ。
はぁ、いちばんイジりがいのある人なのに。
「よっ、夢姫ちゃん!なになに、浮かない顔だな~」
「…………佐助さんかー」
「ちょっ、なにその反応。いくら俺でも傷つくんですけど」
「あー、すみません。なーんかヤル気が出なくて」
「ふーん……そういえば旦那の唇、奪ったんだって?」
「ふなっ!?」
いきなりタイムリーな話題転換です。
衝撃に思わず変な声も出るってものですよ。
っていうか。
「なんで知ってるんですか…」
「混乱状態な旦那に、真っ赤な顔で打ち明けられたから」
あ ん の ワ ン コ め ! !
かわいいけど、かわいいですけどぉぉおおおおっ!!!!
はっきり言って、「なにしてくれちゃってんですかコノヤロォオオ!!!?」ですよっ。
「はぁ……奪ったことは否定しませんけど、あれはあくまで事故ですよ」
「あ、そうなんだ?」
「ええ。たまたま接触事故を起こしたときに、お互い口がぶつかったというだけなんです」
「ははっ、やっぱりな~。んなことだろうとは思ってたけど……まぁ、ご愁傷さま」
そうなんですよ。
事故なんです。
残念ながら。
……って、何がご愁傷さま?
な、ななななんだか嫌な予感が背筋をゾクゾクと駆け上ってきましたよ。
アレ?
「あの、佐助さん? 私、なにか同情されるようなことが起きるんですか、ね…?」
「あー……実はさぁ…………旦那の声があんまり大きいもんだから」
そこで一度、言葉を切った佐助さんは。
素敵に輝いた笑顔を浮かべ。
「かすがに知られちゃった」
死刑宣告をくれやがりました。
◇・◆・◇・◆・◇
佐助さんは無駄なイケメンスマイルを振りまきながらしれっと見捨てる気がします……どんなイメージだ。
佐助:「まぁ、さすがに死にはしないだろ?いくらなんでも、かすがだってそこまで馬鹿じゃないさ」
夢姫:「これでも昔、かすが嬢のお手製猛毒を盛られたことがあるのですが…」
佐助:「…………」
夢姫:「なんで無言で肩を叩くんですか、拝むのやめてくださいまだ死にませんからっ!!」