第33章 事故チュー(薬師視点・幸村)
目の前で無防備に眠っているのは。
戦場で紅蓮の鬼と恐れられている筈の、真田幸村。
気持ち良さそうに目を閉じている顔は、普段よりもだいぶ幼く見えます。
「確かに、お昼寝日和ではありますけど……」
ここ、私が借りている部屋なんですけど?
いったい、いつの間にやってきていたのでしょうか。
……まぁ、この人が勝手に留守の女人の部屋へ入るわけがないから。
きっと空き部屋と勘違いして、そのまま寝入ってしまったんでしょうね。
しかし。
それにしても。
「かわいい寝顔ですこと」
いや、なんて言うの?
母性本能をくすぐるタイプですね、これ。
うん。
かわいい。
かわいい。
かわいい。
かわ………………やば、あまりの可愛さにドキドキ……よりもムラムラしてきた。
あああ、すみません。やばいです、私。危険です。
「幸村さーん、起きてくださーい」
「…………」
「幸村さんっ、ほらー、起きてくださいってば」
「……むぅ……ん……」
うわっ……むずがってる子供みたいですっ。めちゃくちゃ可愛いですっ!!
ぐあぁ、火に油っ!!くう~~、悪戯してやりたくなってきましたーっ!!
うーん、うーん、大変だー。
「幸村さーんっ、本当、起きないとやばいですよ!貞操の危機ですよ!!幸村さんが童貞かどうかは知りませんけど、あなたの身が危険ですよーっ。起きてくださーい」
「…………う?」
「あ、気づきました?……ってほらほら、寝ないで下さい!起きて起きてっ、起きないとキスしちゃいますよー!あ、これじゃあわかりませんね。では改めて……起きないと口吸っちゃいますよー!!」
叫んだ瞬間、幸村さんの目がカッと見開いて。
急に視界が暗くなったかと思うと、顔面に強い衝撃が走った。
「ぐぅ……いつつ……あ、だ、大丈夫でござるかっ、夢姫殿!?」
「うぐ……うぅぅ……口、と鼻が、痛いです……」
唇、切れてるかもしれません。
がっつり打った歯と歯茎も痛いし、涙が出そうです。
畳に鼻血が垂れて……ませんね、よかったぁあ。