第31章 IF遙か3~復活~戯言編4(薬師視点・人識・双識(仮))
いつものように心の中で突っ込みまくりながらも、どこかホッとした気分で人識くんの方へ歩み寄る。
べつに、逃げたわけじゃありませんよ。違いますからね。
「夢姫ちゃん。さっきの話、気が向いたら考えてみてくれ。ではまた来るよ、人識くん」
「今度は連絡くらいしろよな」
「それもそうだね、今度は連絡をいれてからインターホンを押すことにするよ」
「直前にしろって意味じゃねぇよ、事前連絡の意味を考えろよ」
「ははは、人識くんが逃げないと約束してくれるなら考えてあげるとも。夢姫ちゃん、また会おう」
「お、お気をつけて……」
爽やかに穏やかに見える笑顔のまま、人識くんの最後の言葉を華麗にかわしつつ、双識さん(仮)は私にだけ危険案件を残して去っていった。
嵐は過ぎた。
しかし、厄介な種が植えつけられた。
こうなれば、わたしに出来ることは芽吹いた葉っぱが元気いっぱい盛り沢山に茂らないよう、祈るのみ。
あと、気配を消そう、死ぬ気で殺そう。
かすが嬢との命がけな鬼ごっこを思い出すんだ!よし、イケる、やれる、大丈夫!わたしは生き抜いてみせます、見ていてください謙信様っ。
……それにしても、滞在時間およそ十分弱…って短すぎませんか?いったい何しに来たんでしょう。
もしかして人識くんに変な虫がついたのではないかと、わざわざ確認しに?
気に入らなければ排除されていたり、とか…………こわっ!怖すぎるんですけど!!
双識さん(仮)の家族愛が重すぎて深すぎて恐ろしいですっ、攻撃されなくてよかったぁああ!!!!
ちなみに双識さん(仮)が帰った後――…
「あの、人識くん?身動きが激しく取りづらいので、そろそろ離れて頂けたらとっても助かるのですが……」
「この方が、いい筋トレになるだろ?あっさり死にたくなけりゃ、もうちょいこのままな」
何故か不機嫌気味な人識くんが、背後からベッタリガッシリ体にしがみついて離れず。
お風呂とトイレ以外は、寝るまでずっとそのまま引きずって移動という。
嬉しいようで地味に辛い、強制筋力トレーニングの刑に処されたのは余談である。
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薬師さん、双識さん(仮)と出遭うの巻。
ハッキリしっかり名乗られたわけではないので、あくまで双識さん(仮)。