第31章 IF遙か3~復活~戯言編4(薬師視点・人識・双識(仮))
「べつに悪さをしようというわけじゃないさ。ところで夢姫ちゃん、私のお嫁さんにならないかい?」
「はい?」
「言ったそばから悪意しか感じられない行動とるんじゃねぇよ」
あ、笑顔の双識さん(仮)の頬に赤い線が……って、予備動作ゼロで攻撃するのやめてくださいよ人識くんっ。
意識していないときの私の反応速度は、自慢じゃありませんが一般人の中でも遅い方なんですからね。
「おや、嫉妬かな?」
「誰が。そんなんじゃないっつーの」
「はい人識くん、それ以上は禁止ですよー」
医者の前で怪我人を作らないでくださいねー。
どうも可愛い弟の反応を楽しんでいるようにしか見えない双識さん(仮)を止めるべく、先に人識くんへ釘を刺しておく。
まぁ正確には、医者ではなく薬師なんですけどね。
患者を治すお手伝いをするといった意味合いではどちらも大差ないので、とりあえず良しとしておきましょう。
この時代に薬師とか、時代錯誤もいいところですし。
「あの、よろしければ傷を治しますので、少し屈んでいただけますか?」
「いいのかい?では、お言葉に甘えるとしよう」
「そんな掠り傷、放っとけばすぐ治るだろ」
「職業病でして、傷を見たら気になってしまうんですよ。ああそうだ、人識くん。作って冷蔵庫に冷やしておいたロールケーキが、そろそろ食べ頃かと」
「よし食うか」
即座に身を翻し冷蔵庫へ向かった人識くんに一息ついて、失礼しますと言ってから双識さん(仮)の顔へ手を伸ばす。
BASARA技を発動させれば、本当に大した傷ではなかったらしくほんの数秒で癒しの光は収まった。
その間、何故か双識さん(仮)は私の目を真顔で見つめてきたので怖すぎて逆に目を逸らすことができず。
頬から手を離してようやく恐怖の睨めっこから解放された時には、極度の安心感から泣きそうになりました。
「話には聞いていたが……本当に治せるとは、すごい力だね」
そう言って、痕も残らず何もなかったかのように綺麗になった頬を指でなぞり、関心したように笑みを浮かべる双識さん(仮)。
「いえ、それほどでもありません。ただ、できれば他の方にはご内密に願います」
これ以上、特殊な方々に興味を持たれるのは本気で回避したいです。