第31章 IF遙か3~復活~戯言編4(薬師視点・人識・双識(仮))
「人識くん。今、本気で手首を切り落とそうとしただろう」
「気のせいだろ」
明らかに気のせいじゃありませんよね。
表決とるならお兄様に一票いれますよ。
デンジャラスな兄弟スキンシップを図るのは、是非とも私がいないときにして頂きたい。
ついうっかりで巻き込まれ血みどろスプラッタとか冗談じゃ済みません、本気でも嫌です。
まぁ、何もないのに人識くんがそんなミスするとは思いませんけれど、気まぐれで何するか分からないところはあったりしますからねぇ。
……なんだか最近かわいさばかりが目立って忘れがちですが、危険人物に変わりないんですよね。
油断しすぎていたら、気が向いたとか手が滑ったとか何となくとか、そんな理由でサクッと殺される可能性もありえるワケで。
よし、ちょっと気を引きしめよう。
「さて。では残念だが、そろそろ私はお暇するとしよう。今日はこれから用事があるのでね」
「そりゃラッキー」
「え、もうお帰りになられるんですか?お茶も出さずに申し訳ありません」
どうやら二人のやり取りをボーッと眺め考え込んでいる間に、双識さん(仮)のタイムリミットが来てしまったようです。
「いや、こちらこそ突然悪かったね。よければまた今度、改めて一緒にお茶でも飲もうじゃないか、三人で」
「げっ、兄貴とお茶とか勘弁してくれよ」
「はい、喜んで。楽しみにしておきます」
人識くんと私の正反対な返事が同時に発され、思わず顔を見合わせてしまう。
なんでそんな絶妙に何とも言えない複雑な表情をしているんですか、失礼な。
双識さん(仮)はと言えば、何故かパァア…と顔を輝かせ、長い腕をこちらへ伸ばすと左右それぞれの手でポンポンッと、人識くんと私の頭を撫でてきました。
ええと……私、余裕で二十歳越えしているのですが…………子ども扱いですか、そうですか。
「うん、いいね、夢姫ちゃん。実にいい」
「ええと……?」
「おい兄貴、変なこと考えるなよ。このおねーさんは俺が拾ったんだからな」
双識さん(仮)の手を飛んでいる虫のようにベシッと振り払い、怖いお顔で睨みつける人識くん。
どうしてそんなに警戒心ばりばりなんですかね、たしかに意味不明で意味深で怪しげな言葉ですけれど。