第30章 IF遙か3~復活~戯言編3(薬師視点・人識)
自称他称殺人鬼な無自覚天然タラシ殺し風の笑みに内心、激しく動揺した。
しかしここでそんな弱みになりそうな事実を晒すワケにはいきません。
ああ、謙信様…どうか力をお与えくださいっ……ああ、かすが嬢…の、罵る声が聞こえてきそうです……というかほんとに幻聴が「この軟弱浮気者め!」っていう声が聞こえますよ?
どんなテレパシー……あれ?浮気者ってなんでしょう、まぁいいや。
「だからって、わざと家出しないでくださいね」
「わーかってるって、夢姫ちゃんは寂しがり屋さんだからなぁ」
「あ、私が牛丼です。カレーはそちらの彼にお願いします」
「聞けよ」
聞いてましたよ?でも、ちょうど頼んでいた牛丼とカレーがきたんですから仕方ないじゃないですか。
文句なら私ではなく、ご自分のタイミングの悪さに言ってください。
「あっ、私のお肉!勝手にごっそりスプーン食いしないでください!」
牛丼からお肉をとったら、それはもはや牛丼ではありません。
牛丼の気分じゃないと言いながら何故、私の牛丼の具を食べるんですかっ。
頬をハムスターみたいに膨らませながら当然のようにモグモグ咀嚼する人識くんを恨めしげに見つめながら、だくだくなおつゆに浸っているご飯を食べる。
味はいい。おいしいですよ、でもたっぷり具と一緒に食べたかったです!
「なぁ、夢姫」
「……なんですか」
「ほれっ」
「むがっ」
間髪入れず問答無用で口にスプーンを突っ込まれた。
前にも似たようなことがあったような…………なんて危険なデジャヴ。
スパイシーだけれど甘みのある、なんとも馴染み深い味と香りが口いっぱいに広がってくる。あ、カレーですね。
「うまいだろ」
「んぐんぐんぐ」
口を開いたら絶妙につぶれて混ざり合ったカレーと米粒がライスシャワーの如く人識くんに降り注ぎかねないので、代わりに何度もコクコクわかりやすく頷いてみる。
「かははっ、肉多めのとこ選んでやったからな」
後から自分のカレーの肉をたっぷりくれるなら、どうして私の牛丼の肉を奪ったんですかね?
人識くんの行動について、どなたか解説お願いします。