【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第11章 初詣 (及川 徹)
徹にはまだ言ってないけど、私の志望校は青城ではなく烏野高校だ。
中学で色々あったので、高校は徹と別の所に行こうと決めていた。
それに学校まで私の面倒を見てもらうのは流石に徹に申し訳ない。
その時間で徹が素敵な彼女でも作ればいいのに…と思う。
まぁ、徹は私が青城に行く事を楽しみにしてくれてるようだから、今はまだ言わなくてもいいかなぁ。
「そうだね。春から私も高校生かぁ。後で合格祈願の御守り買わないと。」
少しづつ人の流れに沿って、拝殿に近付いていく。
年が明けたせいもあり、心なしか周りの人達の表情も明るく、賑やかな感じがする。
「御守りなんて無くても、和奏が受験勉強頑張ってるのはよく知ってるから、合格は間違いけどね。」
こんなに優しい幼馴染が居て、私って幸せ者だなぁ。
こんなに優しくしてもらうのが申し訳なく感じるくらいだ。
「徹が本当のお兄ちゃんなら良かったのに。」
そしたら、もっと遠慮なく甘えられるのに。
「は!?どういう流れでそんな話になったの!?俺は絶対に嫌だよ。和奏が妹なんて…困る!」
困る…って。
「そんなに力一杯拒否しなくてもいいのに。」
わざと唇を尖らせると、徹が慌てるのはわかってる。
「そういう意味じゃなくて…今のは言い方が悪かったけど…。」
想定通りにワタワタと慌てていた徹が、途中でニヤッと笑ったかと思うと、急にチュッと唇を重ねてきた。
「ちょっ…徹!?」
「キスして欲しそうな顔してたから。」
満面のイタズラスマイルの徹。
普段はカッコいい徹も、こういう表情は小さい頃のままだ。
「2人きりの時しかダメだって言ったのは徹のくせに。」
キスは人前ではダメだと、しつこく言ってきたのは徹なのに、その徹が約束を破るなんて。
しかも、私みたいな妹は困ると拒否した件だって、まだ怒ってるのに。
「ごめんって。合格祈願の御守り、俺が買ってあげるから許して。俺が買えばご利益2倍だよ。」
何だか、笑っちゃうくらい凄い自信だ。
面白くなって笑ってしまったら、もう徹のペースに乗せられている。
「しょうがないなぁ。ちゃんとご利益2倍のやつよろしくね。」
いつだってこんな感じで…徹とは中学生になった頃から喧嘩らしい喧嘩はしていない。
「わかってるよ。まぁ、御守りの前にまずはお詣りのだね。ほら、順番来たよ。」