【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第11章 初詣 (及川 徹)
徹に促されて、拝殿への階段を数段登った。
何だか、初詣って毎年の事だけど背筋が伸びるような気持ちになる。
お賽銭を投げ込むと、徹が鈴を鳴らした音に合わせて2度手を合わせる。
高校受験に無事合格しますように。
徹に素敵な彼女が出来ますように。
それから…。
欲張りに何個かのお願い事を伝えて、ゆっくり目を開けると、徹が隣からこちらの様子を伺っていた。
無言のまま、一度離した手をまた繋いで、2人で境内を逆に進む。
「和奏は何お願いしたの?」
人混みをぐっと私の手を引きながら徹が言った。
聞き飽きた…って言っても嘘じゃないくらい毎年定番の質問だ。
「もー、それ毎年聞いてくるよね。徹は??」
「んー、俺は去年と一緒…ってか、毎年同じお願いだよ。でも、今年こそ叶えるつもり。」
もう5年くらいそうやってはぐらかされている。
毎年同じお願いって何だろ…。
それこそ、健康とか?
いや、今年こそ叶えるつもりって事は…。
「わかった!バレーボールだ!!全国出場!そうでしょ??」
徹が驚いたように目を開いて、一拍空けて笑い出した。
えっ…違うの?
「和奏のそういうところ、本当にいいよね。まぁ…楽しみにしてなよ。」
ケラケラと笑いが止まらない様子の徹に、私の予測が外れた事だけはわかる。
「えー、気になるよー。」
「はいはい。叶ったら教えてあげるよ。それより、和奏の番だよ?何のお願いしたの?」
叶ったら…か。
徹の何年越しものお願いなら、私も応援したいな。
「えっとね、受験の事とか?あっ、徹に素敵な彼女が出来るようにお願いしといたよ!」
「それ…今すぐに和奏が叶えてよ。新年だし、これを機に俺の彼女にならない?」
そしたら、俺のお願いも…とブツブツ言う徹を、今度は私が笑い飛ばす番だ。
「もー、そうやって冗談ばっかり言ってるとご縁が逃げて行くよー。」
はーっと、何故か溜息をつく徹を眺める。
ご縁かぁ…。
最後に神様にお願いしたことを思い出す。
高校生になったら、素敵な恋が出来ますように。
夢のようなお願いだけど…。
この時の私はまだ知らない。
春の訪れと共に素敵な出会いが訪れる事を…。
今はまだ寒さの中で…花咲く時を待っている。
Happy New Year.